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わが子の将来を考える|第6回

犬のシニア期について:前編
愛犬のライフステージを考える

皆さんは「犬の平均寿命」をご存知でしょうか。
ざっと15歳前後?大型犬は小型犬より寿命が短いと聞いたことがある!など、なんとなくはわかっているものの、実際のところどうなんだろう?という飼い主も多いのではないでしょうか。

実は、犬はそのサイズによって微妙に平均寿命が異なります。
超小型・小型犬と呼ばれる体が小さいサイズの子たちの平均寿命は、14~15歳前後、中型犬や大型犬といった体の大きな子たちの平均寿命は13~14歳前後と言われています。
もちろんこれはあくまでも「平均寿命」ですから、個体差があって当然です。

犬のシニア期とは

さて、そんな犬たちの一生の中で、「シニア期」と呼ばれる時期はいつから始まるのでしょう。
一般的には小型犬で7歳頃から、中・大型犬で5、6歳頃からシニア期が始まる、と考えられています。
しかし、実際にはその年齢であってもまだまだ若いのに、と思う飼い主は多いことでしょう。
なぜこのような認識の差が生まれるかというと、外見や行動のみで老化を判断することが難しいからです。

年若い犬でも、寝ることが多い個体もあれば、10歳を過ぎても元気で活動的な個体もいる。
見た目も、茶色や黒色の毛色に白い色の毛が混じるようになると歳をとったな、と感じることがあるかも知れませんが、もともと白色の毛色では、その変化がわかりません。
こうしたことをふまえ、犬のシニア期とは、高齢(シニア)の仲間入りをした、というよりは、「心身の老化が始まる時期」と捉えると良いかもしれません。

ちなみに、犬のライフステージは、乳児期に当たるのがパピー期、活動が活発になり子犬から成犬に向けての成長過程をジュニア期、心身共に成長し終え、もっとも活動的な成犬期、そして、老化が始まるシニア期と、身体機能が衰え、高齢による心身への影響が顕著となるハイシニア期、と分けて考えることができます。
シニア期の始まりが5~7歳として、ハイシニア期と呼ばれる時期は、概ね10~12歳頃からと考えられています。

老化現象のサインとは

では、老化の始まりにみられると考えられている特徴の一部を見ていきましょう。

被毛の老化

人間でいう白髪(白い毛)が見られるようになる・被毛の色や鼻の色が薄くなる・被毛が薄くなる・皮膚に弾力がない・フケが目立つようになる・皮膚トラブルを起こしやすくなる、といったことが見られるようになったら老化のサインです。
日々目にしている被毛だからこそ、その変化に気がつきやすいかも知れません。

目の老化

次に、注目したいのは、目です。

目が白く濁る「白内障」という病気があります。
白内障には、ケガなどによって引き起こされる外傷性のものや生まれついでの先天的なもの、さらには、遺伝によって若年期に発症するもの、そして、加齢によって引き起こされる加齢性のものがあります。

加齢性の白内障は6~8歳頃から発症すると考えらえています。
犬の白内障は、もともとは透明なはずの水晶体が、いろんな原因で変化を起こして不透明になってしまった状態をいい、ここが不透明になると視力が低下していきます。

そのため、物にぶつかるようになったり、目が見えない不安から攻撃的になったり、夜鳴きをするようなこともありますし、白内障から緑内障という病気が続発することもあると言われています。
そのため、5、6歳ごろから、眼球の奥の方が濁っていないかどうかこまめにチェックしたほうが良いでしょう。

また、遺伝的に白内障になりやすい犬種として、トイ・プードルや雑種、柴犬などが挙げられます。
これらの犬種を飼っている場合には、1歳を迎えたら定期的に白内障の検査を受けた方が良いのかも知れません。

気をつけたいのが、加齢と共に水晶体が青白くなる「核硬化症」という状態です。
同じように水晶体が青白く濁って見えるのですが、とくに視力には影響がなく治療は不要と言われています。
愛犬の目が白く濁って見えたときに、インターネットなどで検索すると、白内障の他にこの核硬化症という名前が出てくることでしょう。

そこで、白内障かもしれない、と心配して動物病院の診察を受けるならいいのです。
困るのは、自己判断で「きっとこの核硬化症なんだ」と判断してしまうこと。
本当は白内障であったのにも関わらず見過ごされることで、様々な問題につながってしまう可能性があります。
見た目では初期の白内障との見分けがつきにくいため、目が濁って見える時には、必ず動物病院で診察を受けるようにしましょう。

口の中の老化

そして、口の中の変化にも注意が必要な時期となります。
とくに、ハミガキが苦手な子では、口臭がきつくなったり、歯垢が石化した歯石の付着が顕著になったりと、口の中の健康が悪化してくることがあります。
そうなると、歯垢に潜む細菌が原因となり歯肉が腫れる歯肉炎や、歯を支えている歯周組織が破壊されてしまう歯周炎が引き起こされるのですが、これらを総じて歯周病といいます。

歯周病が進行すると歯を支えているあごの骨(歯槽骨)が溶けていき、最終的には歯が抜け落ちたり、最悪の場合、下あごの骨が骨折してしまうこともあります。
また、炎症部位の粘膜では血管に細菌が入り込み、心臓病や腎臓病を引き起こすとも考えられています。

このように、目に見えやすい老化のサインがあり、そこから徐々に、呼びかけや音に反応しなくなる、寝ている時間が増える、散歩や遊びに興味を示さなくなる、食欲が増す、もしくは食欲が減退する、といった行動の変化や、トイレに行く回数が増える、排泄を失敗するようになる、血尿が見られる、足を引きずるように歩く、階段の上り下りをしなくなる、といった身体的な問題が見られるようになるなど、老化が進行していきます。

まとめ

「シニア期」とは、「心身の老化が始まる時期」であり、これから体力が衰えたり、行動の変化が見られたり、様々な病気のサインが表面化してくる時期です。
健康的なシニア期を送ってももらうためにも、ほんの小さな違和感を見逃さないようにしていきましょう。
次回はシニア期の代表的な病気と、それらの病気を患っていても、愛犬が快適に暮らしていくためのポイントをご紹介します。

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佐藤 麻衣氏プロフィール

一般社団法人 全日本動物専門教育協会
動物介在福祉士 教師
家庭犬訓練士 教師
SAE認定 犬猫行動アナリスト 専任講師
SAE認定 愛玩動物介護士 専任講師
SAE認定 愛玩動物介護士アドバンス 専任講師
SAE認定 犬の健康生活管理士 専任講師

長年動物の専門学校で教鞭をとり、犬のトレーニングや動物介在福祉活動などに従事。
現在は専門学校や大学、国内初の官民協働PFI刑務所の職業訓練プログラムに於いてトレーニング技術を教え、一般の飼い主に向けても資格取得に向けた講座やペット防災など様々なセミナーで活躍。