シニア犬の食事について:後編
後編ではシニア犬の食事で注意すべきポイントをお伝えします。
ポイント1. 食欲不振時は、まず動物病院で診察を
気をつけたいのが食欲不振の時です。
食欲不振の原因と考えられるものは、
①なんらかの疾患を患っている
➁下痢や嘔吐、便秘が見られる
➂お腹が空いていない
などが考えられるでしょう。
下痢や嘔吐などは目で見てわかる症状であり、異常に気がつきやすいですが、体の中の異常は検査を受けないと分からないものです。
まずは動物病院で食欲不振の原因をしっかりと調べてもらいましょう。

調べてもらった結果とくに問題はない、となった時の食欲不振は、もしかしたらお腹が空いていないだけなのかも知れません。
若い頃ならとにかく体を動かす時間も多いと思いますが、シニア期になり、寝る時間が増えてくると体を動かす時間が減りお腹が空かない、ということもあり得ます。
寝ているところを起こすのはかわいそうですが、こまめに遊ぶ時間をとったり、ちょっと外に連れて行ったり「体を動かす時間」を増やすことで、食欲が戻ってくることがあります。
ちなみに、シニア期になると長時間の散歩も負担になってくることがあるので、一回の散歩時間を短くして何度も行くようにすると、運動不足と食欲不振の両方を解消することができます。また体への負担を軽減することもできるので、一石三鳥と言えるかもしれませんね。
ポイント2. シニア期はご飯の与え方にも工夫が必要
次に注意したいのがごはんの与え方でしょう。
シニア期になると、歯が抜けおちることでごはんが食べにくくなり、消化不良を起こしやすくなります。
嚥下機能も衰えてくるので、のどに詰まりやすくなることもあります。

まず、お腹の負担を減らすために一度に食べる量を少なくし、回数を増やしてみることをお勧めします。
そして、より食欲がわくよう与えるフートをふやかしたり、ウェットフードを少し混ぜるなど、匂いが分かりやすくするのもお勧めです。
また、シニア期になると寝ている時間が増えるため、体内時計が狂ってしまうことがあります。
そうなると昼夜逆転生活となり、人間の認知症に近い症状が出る場合もあります。
少しでも体内時計を調整するために、ごはんを与える時間をなるべく同じになるようにすると良いでしょう。
下を向いて食べるのが辛くなってくることもあるので、台などを用意して首を下げなくても食べたり飲んだりできるようにすることも重要です。
そして、食事中や食後すぐは、ごはんがのどに詰まっていないかどうか行動を観察するようにしてください。
詰まってしまってもすぐに吐き出してくれればいいのですが、のどに詰まったまま呼吸困難に陥る危険性もあるので油断は禁物です。
ポイント3. いつもの手作り食もシニア期には注意が必要
最後は、現在手作り食をメインで用意している場合についてみていきましょう。
犬たちの健康のため、アレルギー体質で、普通のフートは食べてくれなくて・・・。
様々な理由で手作り食を用意している方もいらっしゃることでしょう。

手作り食は、材料が分かっているので安心できるということと、愛犬の好みに合わせて作ることができるので食いつきがいいこと、など良い面もある一方、必要な栄養素をしっかりと摂取できているか、衛生面の問題はないか、など心配な面もあります。
特にシニア期は必要となる栄養素が異なってくること、病気などが見つかり療法食への切り替えが必要になる可能性があることなどを考えると、少し難しい面も出てくるかもしれません。
まずはかかりつけの獣医師にしっかりと相談すること、こまめに健康状態をチェックしてもらうことをお勧めします。
そして、もし療法食などへの切り替えが必要になったとして、スープやふりかけはOK!というのであれば、そちらを手作りするのはどうでしょうか。
全てを手作りで用意する楽しさは半減してしまうかもしれませんが、用意できるものが減るからこそ、それを極める楽しさ、というのもあるかも知れません。
食事は体を支える重要な要素。
全てが衰えてくるシニア期だからこそ、手をかけ、時間をかけ、健康に長生きできるよう気を配っていきたいですね。
佐藤 麻衣氏プロフィール
一般社団法人 全日本動物専門教育協会
動物介在福祉士 教師
家庭犬訓練士 教師
SAE認定 愛玩動物介護士 専任講師
SAE認定 愛玩動物介護士アドバンス 専任講師
SAE認定 犬の健康生活管理士 専任講師
長年動物の専門学校で教鞭をとり、犬のトレーニングや動物介在福祉活動などに従事。
現在は専門学校や大学、国内初の官民協働PFI刑務所の職業訓練プログラムに於いてトレーニング技術を教え、一般の飼い主に向けても資格取得に向けた講座やペット防災など様々なセミナーで活躍。