知りたい

プロが語るお役立ち記事

わんわん診察室|第30回

犬の膿皮症 ②

膿皮症(のうひしょう)は、皮膚の細菌感染症です。皮膚の表面に存在する常在菌が増殖し感染することで生じ、かゆみや赤み、湿疹や脱毛などの症状を引き起こす皮膚病です。犬によく見られ、春先~梅雨・夏場などに多くみられます。
前回は、そんな膿皮症の原因や症状などについてみていきました。今回は、犬の膿皮症について、診断方法や治療法などについて紹介していきたいと思います。

膿皮症の診断

患部に直接スライドグラスを当てたり、セロハンテープでペタペタすることによって表皮の細胞をとります。これを顕微鏡で観察することを細胞診(さいぼうしん)といいます。

ブドウ球菌と好中球

細胞診では、細菌の増殖や、炎症細胞の浸潤を確認します。

また、原因菌の特定と、効果のある抗菌剤を選ぶために細菌培養検査をすることもあります。

膿皮症の症状は、他の皮膚病と似ることもあるので注意が必要です(毛包虫症、皮膚糸状菌症など)。原因に合った治療が必要ですので、これらのような皮膚症状が見られたら、まずは獣医師の診察を受けるといいですね。

膿皮症の治療

膿皮症の治療には、消毒や薬用シャンプー・外用抗菌剤を用いた外用抗菌療法と抗菌薬の全身投与による全身抗菌療法があります。

① 外用抗菌療法

抗菌薬用シャンプー

② 全身抗菌療法

外用抗菌療法のみでは治らない、また何らかの理由で外用抗菌療法が十分行えないような時には内服薬や注射薬による全身抗菌療法が行われます。

ブドウ球菌は皮膚にもともと住んでいる常在菌なので、数を完全にゼロにすることは難しいです。抗菌薬を無計画に投与していると、抗菌薬に対して菌が抵抗性を持つようになることが多く、これを抗菌薬耐性菌といいます。漫然と抗菌薬を使用し続けるのはやめましょう。

外用抗菌療法と全身抗菌療法を比較した研究では、どちらにも同等の治療効果があったと報告されています。

膿皮症のスキンケア

わんちゃんに応じて、入浴、シャンプー、保湿などを組み合わせることで高いスキンケア効果が期待できます。

膿皮症には炭酸泉や硫黄泉の入浴が有効です。炭酸泉は皮膚のpHを酸性に傾けて、細菌が繁殖しにくい皮膚づくりをしてくれます。

また、シャンプーの後には必ず保湿を行いましょう。
シャンプー洗浄後は皮膚が乾燥し、皮膚バリア機能が低下することがわかっています。
保湿はシャンプーの後だけでなく、日常的なケアとして行うことで皮膚の健康維持に役立つことが期待できます。

消毒成分や抗菌ペプチドを含んだスキンケア製品を日常のケアに用いることも膿皮症予防につながる可能性があります。

高温多湿な梅雨〜夏季には、室温や湿度の調整などの環境整備も大事です。
免疫力を高めるために乳酸菌製剤などのサプリメントを併用するのもいいですね。

まとめ

膿皮症は犬で発生しやすい皮膚トラブルの一つです。膿皮症の発生には、別の要因が影響していることがほとんどです。
膿皮症の原因を治療することが、治療や再発予防のためには大切です。
ぜひ動物病院に相談してみて下さいね。

特別企画

石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。