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わんわん診察室|第28回

犬の花粉症

桜の季節が過ぎてますます暖かくなり、愛犬とのお散歩が楽しい季節になってきました。
でも、鼻がムズムズしたり、目が痒くなったり…。花粉症の人にはまだまだつらい季節が続きますね。

ところで、犬にも花粉症はあるのでしょうか?
今回は、犬の花粉症とはどんなものなのか、どんな症状が出るのか、などを詳しくお話していきたいと思います。

そもそも花粉症とは?

スギやヒノキなどの植物の花粉が原因で生じるアレルギー症状を「花粉症」と呼びます。異物である花粉(抗原)が体内に入った時に、免疫反応が過剰に起きてしまう事で発症します。人ではくしゃみや鼻水、充血・目の痒みなど様々な症状をもたらします。
花粉症に悩まされる人は年々増加傾向にあり、日本人のおよそ4人に1人が花粉症だと言われています。

犬にも花粉症はある?

さて、犬も花粉症になるのでしょうか?

答えはイエスで、実は犬にも花粉症と言えるようなものがあります。
犬の症状は人の場合とは少し違います。
人の花粉症は、くしゃみや鼻水や目の痒みなどが主な症状ですが、犬の場合は人と似た症状(鼻水やくしゃみなど)よりも、皮膚の症状がメインに起こることが多いです。
そのため、愛犬が花粉症だと気づきにくいかもしれません。

犬の花粉症の症状

目の周り・口周りの赤み

症状はだいたい皮膚の痒みから始まることが多いです。

特定の部分を噛む、舐める、掻きむしる、床に擦り付けるといった行動は、痒みのサインです。耳や顔、足の先、脇の下、お腹、足や尾のつけ根などに症状が出やすいです。

花粉が飛ぶ時期はだいたい以下の通り。

  • スギ花粉 2~4月
  • ヒノキ花粉 3~5月
  • イネ科の花粉 5~10月
  • ブタクサ 8~11月

特定の時期にだけ皮膚トラブルが起きる…というわんちゃんはもしかしたら、花粉に反応してしまうアトピー性皮膚炎かもしれません。
また、アトピー性皮膚炎と外耳炎を併発しているケースも多いです。

治療法は?

アトピー性皮膚炎は、体質が関係しているため若くから発症することが多いです。
基本的には完治することはなく生涯付き合っていく必要があるため、継続した治療が必要となることが多いです。わんちゃんの体質、飼主様とわんちゃんとの生活を考慮し、その子その子に合わせて治療を行っていきます。

具体的にはアレルゲンの回避、二次感染のコントロール、炎症の管理(痒みを抑える)、皮膚のバリア機能の維持(=スキンケアやサプリメントなど)、体質改善などを行います。

おうちでできる花粉症対策

皮膚保護服

① お散歩対策

お散歩時に花粉が体に付着しないよう、洋服を着せるのも良いでしょう。帰宅したら、服は脱がせて洗濯し、花粉を家の中に持ち込まないように注意しましょう。

散歩から帰ったあとは、ブラッシングで体についた花粉を落としてあげましょう。固く絞った濡れタオルなどで拭いてあげるのもいいですね。
人も、花粉がついた状態で愛犬を抱っこしたりしないようにしましょう。着替えたりシャワーを浴びてからスキンシップをとるのが理想的です。

② 環境対策

空気清浄機の導入やこまめな掃除で花粉を除去することも重要です。換気するときは花粉の飛散が少ない時間帯(早朝や深夜など)を狙って行いましょう。また、花粉を室内に入れないように洗濯物は室内干し、もしくは乾燥機を使うといいでしょう。

③ 皮膚バリア機能

皮膚が乾燥してバリア機能が低下した状態では、花粉などのアレルゲンが皮膚に侵入しやすくなります。保湿ケアをしっかりと行ってあげましょう。
セラミド関連物質、ヒアルロン酸、リピジュア、必須脂肪酸、ヘパリン類似物質などの保湿成分が含有されている保湿剤がいいでしょう。
必須脂肪酸などのサプリメントなども、皮膚の炎症緩和や皮膚バリア機能の修復も期待できるのでおすすめです。

まとめ

花粉症の方にはつらいこの季節。つらいのは飼い主だけではないかもしれません。
まずは、愛犬が花粉症かも?と思ったら動物病院に相談してみましょう。

飼い主の工夫次第で愛犬が快適に過ごすことができるかもしれません。まずはできる対策から始めてみましょう。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。