知りたい

プロが語るお役立ち記事

わんわん診察室|第27回

ワクチンの抗体価検査

コロナウイルス感染症の流行により、“抗体価検査”というワードも以前よりも一般的になりましたね。
今回は犬における“ワクチンの抗体価検査”とは、どんなものなのか?どのようにして検査を行うのか?どんなメリット・デメリットがあるのか?などをお話していきたいと思います。

そもそもワクチンとは?

ワクチン接種は、様々な感染症から愛犬を守るための大切な手段です。
細菌やウイルスなどの異物から、体を守る抵抗力のことを「免疫」といいます。この免疫の仕組みを利用したものが「ワクチン」です。

ワクチンの中には「毒性を弱めた」もしくは「毒性をなくした」病原体が入っています。ワクチン接種することによって、これらの病原体に対する抵抗力(免疫)を獲得させ、病気の発症を予防したり、重症化を防いだりすることが可能となります。

● コアワクチンとノンコアワクチン

ワクチンにはコアワクチンとノンコアワクチンがあります。
コアワクチンは全ての犬に接種するよう勧告されているワクチンで、致死率が高く、一度流行すると多くの犬に被害を与える伝染病に対するワクチンです。
パルボウイルス・ジステンパーウイルス・アデノウイルス・狂犬病ウイルスがコアワクチンとされています。

一方のノンコアワクチンは、飼育環境や伝染病の流行状況によって接種するように勧告されているワクチンで、パラインフルエンザウイルス・コロナウイルス・ボルデテラ・レプトスピラが挙げられます。

ワクチンの抗体価検査とは

(FujifilmのHPより引用)

抗体価検査は、病原体(抗原)に対して対抗する抵抗力(抗体)がどのくらいあるかどうかを調べる検査です。重要な感染症に対するワクチン効果の保有状態を、数値化して評価することが可能です。

少量の血液を採取して検査を実施します。

抗体価検査のメリット

基本的にはワクチンは1年に1回追加接種を行ないます。(※初年度に関しては2〜3回の接種を行います)抗体価検査を利用すると、重要な感染症に対する抵抗力がどのくらい残っているか確認することができます。

ワクチン接種は感染症予防に非常に有効な手段ではありますが、副作用はゼロではありません。十分な抗体価があれば、その年のコアワクチンの接種は不要であり、ワクチンによる副作用のリスクを回避できますし、次の追加接種の時期を決定する参考になります💉

また、まれにワクチンを何度接種しても抗体がきないorできにくい「ノンレスポンダー」「ローレスポンダー」という特異体質の子が存在します。抗体価検査では、ご自身の愛犬がそういった体質ではないかの確認をすることも可能です。

抗体価検査のデメリット

抗体価検査では基本的には、“コアワクチンの抗体”しか調べることができません。
コアワクチンの抗体価が高いからと、混合ワクチン接種を実施しなかった場合、コアワクチン以外のノンコアワクチンで予防できるはずだった感染症に感染してしまうリスクがあるので注意が必要です。
抗体価検査の結果、十分な抗体がなかった場合は、ワクチン接種が必要な場合があります。

こんなわんちゃんにおすすめ

(ワクチンのアレルギー反応により眼瞼の腫脹が見られている)

  1. ワクチンに対するアレルギー反応が認められたことがある
  2. ステロイド剤で治療中である
  3. 免疫抑制剤で治療中である
  4. 持病がある
  5. 抗がん剤で治療中である
  6. 高齢

まとめ

これからのワクチン接種は、年齢・持病・ライフスタイルを加味し、その子にあった選択を行うことが大事でしょう。
抗体価検査の普及により、「毎年ワクチンを接種する」という選択肢以外に、「抗体価検査を実施し、抗体価を確認してからワクチン接種を検討する」という選択肢が生まれました。抗体による免疫力を維持しながらできるだけリスクを減らしたいというオーナー様には有効な手段だと思います。

特別企画

石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。