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わんわん診察室|第25回

肥満

肥満は人にとっても動物にとっても、健康に害を及ぼす引き金とも言われています。
では、肥満は一体どんな状態なのか?、肥満によりどんなリスクが生じるのか、肥満を予防するためにはどうしたらいいのか?など、今回お話ししていきたいと思います。

肥満はどんな状態?

肥満は正常に比べて体重が多い状態、体脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。
日本国内の犬における肥満発生率は20〜40%と言われており、その原因は食べ過ぎや運動不足、遺伝的要因、避妊・去勢の有無などによるものとされています。

愛犬の今の体型を知ろう!

愛犬が太っているのか、痩せているのか…きちんと把握していますか?
まずは愛犬の体型を知るところからスタートです。

犬の適正体型を簡単にチェックできる方法として「ボディ・コンディション・スコア」略して「BCS」というものがあります。適正体型とは、痩せすぎず、太りすぎず、程よく筋肉や脂肪がついている体型のことを言います。
BCS(ボディコンディションスコア)では、見た目と触れた状態から、体型(特に脂肪の付き具合)を9または5段階で評価します。

ボディ・コンディション・スコア(BCS)引用環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」

~BCSのチェック方法~

  1. 体を横から見て、ウエストの部分にどのくらいくびれがあるかチェックします。
  2. 体を上から見て、腰にどれくらいくびれがあるかをチェックします。
  3. 肋骨に触れて、どのくらい骨が浮き出ているかチェックします。
  4. ウエストの部分を触り、どのくらいくびれがあるかをチェックします。
  5. 腰の骨を触り、どのくらい浮き出ているかチェックします。

肥満がもたらす病気やリスク

肥満は多くの疾患のリスクファクターであることが明らかになっています。犬の寿命にも影響を及ぼすことがわかっており、ある研究によると適正体重の犬と過体重の犬の寿命を比較したところ、すべての犬種で過体重の犬の方が約数ヵ月~2年半も平均寿命が短かったことが報告されています。

  • 関節炎などの骨関節疾患
  • 下部尿路疾患
  • 呼吸器への負担
  • 心臓への負担
  • 麻酔リスクの増加

ダイエットは焦らず、長期的に実施しよう!

ボディコンデションスコアで、肥満もしくはやや肥満だった場合はダイエットが必要ですね。人間と同じく、犬のダイエット法は食事療法と運動療法がメインとなります。
飼い主さんはどうしてもすぐに成果を出したい!と思いがちですが、焦るのは禁物です。
犬にとって急激な食事制限や過度な運動は、身体的にも精神的にもストレスになります。過度なダイエットは非常に危険ですので、絶対にやめましょう。

食事療法

ただ単に体重を減らすだけなら、摂取カロリーを減らせば済む話です。ですがそれでは健康的に痩せることはできません。大切なのは、“ちゃんと食べながら減量”することです。
体重管理が必要な子にはまずは減量用フードをセレクトしてみましょう。減量用フードは栄養バランスが取れていながら、カロリーも調整されています。選ぶのに迷った場合は、脂肪と炭水化物が控えめでタンパク質や繊維質が多いフードがおすすめです。

最適なフード量を知る方法ですが、まずはフードのパッケージを見てみましょう。犬猫の主食となる「総合栄養食」の場合、1日に与える量や回数などの給与方法が年齢や月齢、体重に応じて記載されています。
この時、パッケージの体重表記に注意しましょう。パッケージに記載されている体重は「現在の体重」ではなく「理想の体重」です。そのため、現在の体重の量を与えてしまうとどんどん太ってしまうおそれがあります。

おやつは別腹?

忘れがちですが、おやつにもカロリーが存在します。たいていはパッケージにカロリー表示がありますから、あげた分のカロリーを考慮して食事の量の調整が必要です。

避妊・去勢手術後は体重が増えやすい?

生殖器の機能を維持するには、実はかなりのカロリーを必要とします。それが避妊・去勢手術後には不必要となるため、手術後の基礎代謝率は減少します。
一方で食欲は手術後、変わらないもしくは増加する傾向があります。
そのため食欲に合わせて気にせずにご飯を与えていると、どんどん体重が増え、気づいたら肥満…なんてことになるんです。
そのため、避妊・去勢手術後は、エネルギー量や栄養の吸収スピードなどに配慮された体重管理用のフードがおすすめです。脂肪と炭水化物が控えめで、タンパク質や繊維質が多いフードがいいでしょう。

運動療法

基本的に食事療法がメインとなりますが、運動療法で消費カロリーを増やしたり、代謝をあげるのも大切です。
しかし太っている状態で激しい運動をさせると、身体を傷めてしまう可能性があります。関節などに負担がかからないように、軽いお散歩やボール遊びなどから始めるといいでしょう。ポイントは、無理のない範囲で継続して行うことです。

まとめ

犬は自分で食事の管理をしたり、運動をしたりすることは出来ません。犬の体型や健康を調整できるかどうかは、すべて飼い主にかかっています。
肥満による病気のリスクを避けるためにも、体重管理は大切です。
体重・体型をちょうどいい状態にキープして、かわいい愛犬の健康寿命を延ばしていきましょう。

特別企画

石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。