「4団地理事長」座談会

建替えの賛否

ここからは座談会形式で進行させていただきます。皆さま、ざっくばらんに体験をお話しいただきたいと思います。

インタビューのポイント①

どの団地にも一部に反対者が存在。リフォーム済みを理由に反対する方も。

インタビューのポイント②

反対派とのやりとりを全住民に公表することで、区分所有者の理解を獲得。

座談会 反対者について

どの団地も一部に反対者は存在

各団地とも建替え決議の時点で反対された方はごく少数だったとは思うのですが、建替えの検討中の賛成、反対、それぞれの割合はどのくらいだったでしょうか。概略で結構ですので、国領の宮子さんからお願いいたします

宮子:建替え自体に反対っていう方は、さほどいらっしゃらなかったような気がするんですよね。「とにかく建替えをしたい。」っていう方が圧倒的多数だったのではないでしょうか。当初はいろいろな人間関係の問題等で反対という方がいらっしゃいましたけど、そうした方も3K、3DKの間の土地持分の問題が片付いてからは、ほとんど賛成に回られたと記憶しています。

多田:調布富士見町住宅では、先ほどお話したように最初にアンケートをとったのですが、その時点で80%の方が建替えをしたいと答えられました。

大久保:野毛山はステップを踏んでいくごとに賛成の割合が増えたんですけれども、最初から建替えたいと思っていた方は80~85%ぐらいですかね。残りの方は、「何があっても反対」という数名の方たちは別として、条件ですとか、進め方や計画の内容によっては賛成しかねる、ということだったんじゃないでしょうか。

建物も著しく老朽化が進んでいましたから、建替え自体には賛成という方が多かったのですね

大久保:それでも一時期は、「もうちょっと条件をよくできるんじゃないか。」という意見も出て、賛成と反対で揺れ動く方が出てきて心配しました。

星野さん、池尻はいかがでしたか

星野:池尻は、検討の途中はいろいろな意見も出て、説明会が紛糾することもありました。125戸のうち、決議時点では10%ぐらいの方が反対でしたが、決議後の催告に応じずに、最後まで一貫して反対だったのはごく少数の方でした。強硬に反対された方には、かつて理事をされていた方もいらっしゃいました。

宮子さん、国領の場合と似た状況ですね

宮子:ええ、国領でも以前は建替えを推進されていた方が反対されました。

リフォーム済みを理由に反対される方も

一般的には、マンション建替えというと、お年寄りの方が反対するというイメージがあるように感じるのですけれども、実際はいかがでしょうか?

大久保:野毛山では高齢者の方で、「建替えは賛成だけど、私が死んでからにして。」っておっしゃっていた方がいました。だけど、そういう方も含め、建替え決議成立後は、なんとかまとまることができました。最後まで反対だったのは、「建替え自体には反対ではないが計画がよくない。」とか、「自分はいいんだけど、他の人のことを考えて老婆心ながら反対。」という主張をされた方たちでしたね。

調布富士見町も、高齢者の方で強硬に反対されていた方はいらっしゃらなかったですよね

多田:強硬ではなかったけれども、「私はここで暮らして一生終えるためにリフォームをしましたので、反対です。」といわれた方はいらっしゃいました。でも、最終的には、「皆さまが賛成なさっているのなら。」と、ご納得いただけました。
その方は、非常に聡明な女性の方でした。初めのアンケートにも「反対」と書かれていましたが、理由がはっきりしていましたし、「最終的に建替えが決まったら、総意を乱すことはいたしません。」ときちんと言ってくださいましたから、対応に困るようなことはありませんでした。

いま、既にリフォームされていた方のお話がありましたけれども、星野さん、池尻ではそうした方はいらっしゃいましたか

星野:実は、私自身もリフォームしていました。(笑)ほかにも結構いらっしゃったんじゃないかなと思うんですけれども、それが理由で反対という方はいなかったですね。

大久保:野毛山でも、「もっと前に教えてくれればリフォームしなかったのに。」といわれた方はいましたけど、その方も反対はされませんでしたね。

国領では

宮子:国領ではそういう方はいらっしゃらなかったですね。ずっと以前から建替えの話が出ていたからでしょうか。

かつての建替え委員が反対に転じるケースや無関心な方も

先ほどもお話にありましたが、建替えに反対されたのはどのような方だったのでしょうか。
宮子さんからお聞かせください

宮子:国領で最後まで反対された方は、かつて建替え委員を長い間なさっていた方でした。委員会の運営や建替えの進め方についての意見の食い違いから途中で建替え委員を辞められたのですが、その方が最後まで反対されました。

大久保さんのところでは

大久保:野毛山では、反対の方には3つのタイプがあったと思います。ひとつは、「条件によっては反対だ」という方たち。それから、理由はわかりませんが、計画から進め方まで何でも反対してくるグループ。そして、これは反対とはいえないのかもしれませんが、「私のことには構わないでくれ。」という方もいらっしゃいました。

宮子さん、国領でもお一人だけ、なかなかコンタクトがとれなかった方がいらっしゃったとお聞きしたのですが

宮子:確かにいらっしゃいました。団地にお住まいの一人暮らしの男の方だったのですが、説明会や総会にも参加されず、手紙にも返事がありませんでした。お目にかかろうにも、どこに勤められているかも誰も知らなくて、たいへん困りました。でも、ちょっとしたきっかけで、実はすぐお近くで働かれていることがわかりまして、連絡がつきました。それ以降は普通に連絡ができるようになり、その方も建替えに参加されました。

多田:私たち調布富士見町にも、最終的には何とか連絡がついて、決議にも賛成をいただけましたけれど、外部居住の方で一人連絡先がまったくわからない方がいらっしゃいました。そこまではいかなくても、管理組合活動にあまり関心のない方や、一括建替え決議の議決権行使書の提出期限に遅れる方もいらっしゃって、その方は、賛成だったのですが、催告の手紙を出すことになってしまいました。

野毛山でも、お一人、なかなかコンタクトがとれない方がいらっしゃいましたね

大久保:そうでしたね、外部居住の方で、連絡がつかなくてほんとうに苦労しました。
それと、相続問題で親族間の争いを抱えていて、意思表示をできなかった方もいらっしゃいました。

10人くらい相続人がいらして、話し合いがつかなかったのですよね

大久保:皆さん建替え自体には賛成だったようなのですが、賛成の意思表示ができなかったんです。

つづきまして反対された方の理由についてお聞きしようと思います。まず、星野さん、池尻ではどのような理由で反対されたのでしょうか

星野:池尻では、先ほどお話ししたように、底地権・借地権の整理の必要がありました。整理にあたっては、評価額がいちばんの関心事なのですが、反対された方は「コンサルタントの評価の仕方に問題がある、自分たちの権利はもっと高いはずだ。」ということを強く主張されていました。

池尻に限らず、建替えに際しては「区分所有者の皆さんの権利をどのように評価するか。 」ということが問題になるケースが多いようです。衡平な評価はもちろんですが、それを皆さんにきちんと説明することも大切ですね

反対派のやりとりを全住民に公表したことが功を奏す

調布富士見町では、どのような理由で反対されたのでしょうか

多田:書類が来ると、必ず反対と書いて出される方もいらっしゃいましたが、その方は最終的には建替えに参加されました。
最後まで反対されたのは、国領と同じように、元々は建替えを推進されていたのに、途中で反対に回られた方でした。建替え推進委員だったのですが、意見の不一致から辞任されてしまいました。

元々推進されていた立場の方だから、それまでの議論や活動の経緯もすべてご存知なわけですよね

多田:その方々への対応はたいへんでした。過去の経緯に関する事を含め、いろいろな質問状とかが届くのですが、私たちは個別に回答するのではなく、「こういう質問がありました。その回答はこうです。」と、区分所有者の方全員に書面で開示しました。そうすることで、管理組合としての見解を皆さんに正しく伝えることができたと思っています。

それは、なかなかよい知恵かもしれませんね

多田:個別に対応すると、受け取った方のフィルターを通すので、他の方に曲がって伝わっちゃうことがあると考えて、もらった質問に対しては、全部書面で皆さんに知らせるようにしました。

質問状とは少し違いますが、建替えにあたっては怪文書(出処不明の誹謗中傷)などが回ることもありますけれども、いかがでしたか

多田:もういっぱい回りました。

宮子:国領でも回りましたね。

野毛山はどうでした

大久保:野毛山ではそういったことはありませんでした。

池尻はありましたよね

星野:ありましたね。

知っておきたい!

なぜ意思表示ができなかったのか?

共有住戸の場合には、議決権行使者を選定して、その方が議決権行使する必要があります(区分所有法第40条)。しかし、野毛山住宅のケースでは相続人の間で紛争があったため、議決権行使者を決定できませんでした。そのため建替え決議での意思表示も、決議成立後の催告に建替え参加の意思表示もできず、非賛成者として最終的には売渡請求権を行使せざるを得ませんでした。