防災セミナーイベントレポート
2024.6.30 「ハウジングステージ新宿」インフォメーションセンター(東京都新宿区)
2024年は元日に能登半島地震という大きな災害が起こりました。近年は地震だけでなく台風被害、水害など日本のさまざまな場所で大きな災害が発生しています。
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そこで「ペット防災」をテーマにしたセミナーを、対面型とオンラインの両方で開催。防災セミナーは2020年にも開催し好評を博しましたが、防災に関する情報は常に変化しているので、改めて知識のアップデートを行いました。
ここでは、東京都新宿区にある「ハウジングステージ新宿」インフォメーションセンターで開催された対面型セミナーの様子をレポートします。
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講師にはNPO法人ペット防災サポート協会の理事長を務めている三浦律子先生をお迎えしました。
三浦先生はペットサロンを経営されながら、自らが学んだペット防災を伝える活動を精力的に行っています。そして「現場を知らずに防災は語れない」という信念のもと、さまざまな被災地に実際に足を運びペット支援をされています。
実は「ペット防災の日(9月7日)」は三浦先生が作られました! -
「わんちゃんの部」
わんちゃんの部では、犬を飼っているスタッフも一緒に勉強させていただきました。まず、皆さんに飼っているわんちゃん紹介とともに、セミナーで学びたいことなどをお話しいただきました。
シニア犬を飼われている方、初めてわんちゃんをお迎えしてまだ1年未満の方、大型犬と小型犬を飼われている方など、ペットライフスタイルはさまざま。そして「地震があったらどうするかの不安を解消したい」「どんなものを用意したらいいか知りたい」などの意気込みが聞かれました。
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ペット防災・減災については時代とともに考え方が大きく変化し、現在は2013年にできた「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」に基づき、同行避難することが基本となっています。そこで、ペットと逃げるために必要な「同行避難」「同伴避難」「分散避難」についての理解を深めました。
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ペットを連れて避難する時に必要な「モノ」の備えについては、具体的に用意しておきたいものの紹介や工夫が示されました。なかでもペットと人が共通で使える「備え」としてのペットシーツの紹介は、“なるほど”と感じた方が多かったようです。
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「モノ」以外に、災害への備えとしての飼い主の心構えや責任、住まい対策、日頃から行っておくべきことについても知識を深めました。皆さんの真剣な表情、メモを熱心に取る姿からも防災に対する関心の高さが感じ取れました。
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セミナー後半ではペット防災サポート協会オリジナル「たすかるノート with PET」を使ったワークを行いました。
この防災手帳は飼い主とペットの情報を書き込めるだけでなく、被災した際にどう避難すれば良いかのフローチャートも掲載されているお役立ちノートです。 -
「たすかるノート with PET」
1回目のワークでは、普段からしておくことや持ち出し品リストのチェックなどをしていただきました。ご家族で話し合いながら記入されている方もいらっしゃいました。
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発表では「自分は会社で待機、妻子は原則自宅待機になると考えられるが、連絡手段のこととペット避難についての話を家族としたい」「周りに頼れる人がいないため、今後は隣の大家さんとコミュニケーションを取ることも考えたい」などの声が聞かれました。
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同行避難後のペットとの過ごし方のパターンを学んだあとは、2回目のワーク。連絡する人や、目的別の準備で考えられる備蓄や持ち出し品を書き出しました。
「お願いできそうな顔見知りでも、実際の連絡先を知らない人がいた」「自分が避難する当事者になることをあまり考えていなかった」「備蓄をもう少し増やさないといけないと感じた」などの気付きが聞かれました。
実際に書き出してみることで、防災に関して自分がやらなくてはいけないこと、補充しておきたいものが明確になったようです。 -
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先生は能登半島地震の被災地にも出向き、シャンプーをはじめとしたペット支援活動を行っています。被災地や避難所の様子の写真を見せながら、実際にペットが避難所でどのような環境に置かれていたのか、どのような問題があり先生自身が何を感じたのかなど語ってくださったことで、よりリアルに災害や避難所を感じることができました。
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質疑応答では、事前に寄せられていた「大型犬の場合の注意点は」「持病がある犬の場合の注意点は」ということに加え、新たに「災害時だと普段と違う行動をするなどのメンタル変化、長引く避難生活の中でかかりやすくなる病気など、ペットの心身への影響はあるか」「ペットホテルの経験はさせておくべきか。外でしか排泄できないがトレーニングは必要か」「避難所でのペットにまつわるトラブルはどんなものがあったか」などの質問がありました。
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<参加者様の感想>
- 備えに加え、災害時の行動に関しても詳しく教えていただき今後のためになった。
- 防災について色々な話が聞けて良かった。早速、備蓄品を準備したい。
- たすかるノートが埋められなかったので、帰ってからチェックしてノートを埋めつくして準備をしたい。
- 避難時の準備を考えていなかったので勉強になった。
「ねこちゃんの部」
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ねこちゃんの部は予想をはるかに超える多くのお申し込みをいただき、枠を最大に増やしても入りきらないため抽選とさせていただきました。
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最初に、皆さんに飼っている猫の種類やお名前を紹介していただきました。多頭飼いをされている方、保護猫を迎えられている方の参加が多く見受けられました。
ペット防災の考え方の移り変わりや、ペットと逃げるために必要な「同行避難」「同伴避難」「分散避難」についての理解を深めたあと、防災に必要な「モノ」の備えについて学びました。特に猫の場合はこだわりが強く繊細な子も多いため、飼い主が何をどう備えたらいいのか迷う部分でもあります。
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縦型のケージやクレート、猫用トイレや猫砂など、準備をするうえでどういったことに気を付ければいいかのアドバイスに加え、人とペットが共通して使える「備え」についての話もありました。
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三浦先生は、被災地で実際に猫に関してどのような支援依頼を受けたかを紹介しつつ、飼い主が猫のお手入れをできるようにしておくことの重要性や、準備した防災用品を日常的に試しておくことの必要性についても触れました。
さらに飼い主の責任という観点からの備え、猫の習性を踏まえた住まい対策について話が展開されました。 -
セミナー後半は「たすかるノート with PET」を使ったワークを行いました。ワークを通じて自分や家族が実際に被災したらどのように行動するのか、今、自分たちがペット防災として補充すべき備品は何なのか、改めて見直すことができました。
連絡する人・不在時にお願いできる人の連絡先、避難形態別の備品や持ち出し品もノートに書き出しました。
“猫は外に連れていくことが難しい”と、基本的に在宅避難を考えている方が大半で、ある程度の備蓄や準備をされている方が多数。先生からは「災害によってフードをはじめとした備蓄の分量なども変化します。一度でも荷物を用意してシミュレーションしてみると、これは備蓄に回そう、持ち出し品を減らそうなど見えてくることがありますよ」というアドバイスがありました。
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先生は避難所の現実についても紹介。能登半島地震で被害が大きかった珠洲市の避難所の様子や、実際にペット連れの被災者の方々の行動について写真を見せながらお話ししてくださいました。
その流れで、避難所以外に避難先を複数考えておくことの必要性や、在宅避難のすすめを提言しつつ、「在宅避難した際でも避難所に行って情報を集めたり、ほしい物資をリクエストしたりしてください」と、積極的な避難所の活用を呼びかけました。 -
質疑応答では、事前に寄せられていた「ペットを残し、ごはんや水を置いて避難所に行くことの是非について教えてほしい」「猫の受け入れ可の避難所の探し方は」という質問に対しての回答を行ったあとに、新たに皆さまから質問を募りました。
「備蓄・食料は何日分ぐらい用意すればいいか」という防災準備に関すること以外にも「同伴避難した場合の実際のトラブルを教えてほしい」「被災地に行った時にケージの中にいる猫を見てどう感じたか」など、実際に被災地を訪れた先生にだからこそ聞ける内容もありました。さらに、防災対策に関する+わん+にゃんへの要望も寄せられました。
<参加者様の感想>
- ワークもあり、きちんと防災を考えるきっかけになれたのでよかった。
- 防災対策のイメージがしやすかった。
- 有事の際の備えについて見直す良い機会になった。
- 災害時に備えて準備するものがわかり、今後準備しようと思った。
- 実際の避難所に訪問した経験も含めてお話しくださり、良かった。
- 普段あまり詳しく知ることのできないペットとの避難方法を知ることができて良かった。
- 勉強になった。
- 今まで家族で話し合ったことがない内容について詳しく知ることができ、同時に家族の課題となった。
- 防災について話を聞くことはあっても、ワークショップをして実際に考えることはなかったので、改めて話し合う場を設けなければいけないなと気付かされた。
- なかなか得ることができない、現場の情報などが得られた。
- すごく逃げる猫なので、リードも工夫して練習したい。
わんちゃんの部・ねこちゃんの部で共通して最後に先生が強調されていたのは、「ペットの飼い主も被災者。“迷惑になるのでは…”と躊躇せず、逃げ遅れないことが大切」ということでした。災害を乗り越えペットと生きていくためには一人ひとりの普段からの備え・行動が大事であると改めて考えさせられるセミナーでした。
アンケート結果では「わんちゃんの部」「ねこちゃんの部」ともに高い満足度となりましたが、常に更新していく必要があるのが防災対策です。このセミナーをきっかけに「たすかるノート with PET」を活用しつつ、ご家族や知人・友人の方々と情報を共有し、防災について考え続けていただければと思います。
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今回参加いただいた皆さまには、防災アイテムとしても役立つ、+わん+にゃんオリジナルデザインのサランラップとジップロック、うんちが臭わない袋をプレゼントさせていただきました。
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アンケートでは皆さまからペットイベントで興味のあるテーマがさまざま寄せられましたので、それらを参考にしながら、今後もペットライフに役立つ学びの機会を設けていく予定です。またのご参加をお待ちしています!

午前:わんちゃんの部

午後:ねこちゃんの部