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ドッグトレーナーのわんポイントレッスン

ドッグトレーナーのわんポイントレッスン 第15回

『犬と一緒に寝てはいけない』は本当?

こんにちは!ドッグトレーナーの佐久間です。
さて、今回は『犬と一緒に寝ること』についてお話しさせて頂きます。

よく、しつけについて調べていると「犬と一緒に寝てはいけません!」というようなこと、書いてありませんか?
皆さんも、一度は見たり聞いたりしたことがあると思います。

理由は様々ですが、主な理由の一つとして「犬が人間と同等の立場だと勘違いしてしまい、関係性が崩れてしまう」という事だそうです。
しかし、果たして本当に『犬と一緒に寝ること』で、関係性が崩れてしまうのでしょうか?

早速ですが、私の結論から言うと・・・
答えは「否」です。

私自身ペットホテルに勤めていますが、夜はたくさんの犬達と一緒に寝ています。だからといって、それによって関係性が崩れてしまったと感じることは、一切ありません。

むしろ、犬という動物は群れを成す動物であるため、一緒に寝ることで「守られている」という安心感を与えられるのではないかと、自分は考えています。(ただし高いベッドで寝る場合、犬が落ちたり飛び降りたりして怪我をしてしまう危険性があるため、控えた方が良いでしょう。)

このように、布団に一緒に入ってくる犬もいれば、足元で寝る犬もいます。
どこで寝たいかは犬それぞれなので、犬に決めさせてあげましょう。

では、なぜ『犬と一緒に寝てはいけない』という情報が蔓延しているのでしょうか。

確かに、『犬と一緒に寝てはいけない』場合もありますので、ここでは私の経験から得た『犬と一緒に寝る』ための注意点をお話し致します。

【日頃からの接し方に注意】

☆ より良い関係性の築き方

『犬と一緒に寝る』ことで関係性が崩れてしまうというのは、それ以前から良い関係性が築けていない場合が多く考えられます。

犬とのより良い関係性を築く為には『犬と一緒に寝る』という限定的な場面だけでは無く、日頃からしっかりとルールや境界線を守らせることで、犬に「我慢」から「諦める」事を覚えさせて「この群れ(家族)の中では人間に従わなければいけない」という認識を犬に持たせることが、とても重要になってきます。(たとえば、無闇に吠えてはいけないとか、散歩中に引っ張ってはいけないといったルールや、キッチンや寝室は勝手に入ってはいけないといった、境界線です。)

玄関での境界線は、土間に勝手に下りないようにすると脱走防止にも繋がります。

もちろん、ルールや境界線は各ご家庭で様々だと思いますが、これは人間のお子さんにも必ず行うしつけですよね?

しっかりとこの様なしつけが行われていれば、『犬と一緒に寝ること』で、犬との信頼を深めることができるでしょう。

しかし相手が犬だからといって、ルールや境界線を「何も設けていない」という場合は注意が必要です。

★ ルールや境界線を設けないと、どうなるの?

犬の群れでは、群れの秩序と安全を保つために、ボス犬(「アルファ」とも呼びます)が決めた「ルール」が存在します。

その為、家庭犬でも人間がルールや境界線を設けてあげないと、犬は自分で群れの中のルールや境界線を作り始め、次第に「この群れは自分が統率しないと!」と考えるようなり、立場も人間よりも上だと思い込んでしまいます。

こうなってしまった場合、犬が人間をコントロールしようとする傾向が出てきて、人間に対して要求吠えをしたり、威嚇や攻撃をしたりするようになってしまうこともあります。

また、ほとんどの犬はボス犬としての素質を持ち合わせていないので、犬の精神状態はとても不安定になり、日頃からストレスを抱え込むことで、自傷行為を繰り返したり病気に罹りやすくなったりしてしまう恐れもあります。

自分の手や足をずっと舐め続けていると、毛の色が赤っぽく変色してしまいます。
舐め続けてしまう行為は、何かしらのストレスが原因として考えられますのでいち早く原因を突き止めて改善してあげると良いでしょう。

この様に、普段からしつけが疎かになっている場合、『犬と一緒に寝る』事は、オススメできません。

◆ 例外として

犬に対してルールや境界線が守れていたとしても、一緒に寝ることをオススメできない例外がございます。
それは「犬を迎え入れて間もない時期」です。

子犬であろうが成犬であろうが、まずは1頭にしてゆっくりと休めるような環境を整えてあげましょう。

迎え入れてすぐに、一緒に寝ることに慣れさせてしまうと、飼い主と離れて寝ることが難しくなってしまいます。

犬をどこかに預けることや、大きな災害で避難所での生活になることも考えられます。その際には1頭でも落ち着いていられるようにしつけておかなければ、犬自身が余計なストレスを抱えてしまいますし、周りにも迷惑が掛かってしまいます。

災害時の事を想定して、このようにクレートで大人しく出来るようにしつけておくことも必要です。

1頭で落ち着いて寝られるようになったら、初めは週に1日程度から、徐々に一緒に寝てみてはどうでしょうか?

いかがでしたか?
自分の愛犬と一緒に寝たいというのは、犬が好きな方でしたら誰もが思うはずです。

しかし、「しつけ」という飼い主の責任を果たさずに、愛情だけを注いでも、犬は知らない間にストレスを抱えることになってしまいます。

『犬と一緒に寝る』ということは、しっかりとした関係性を築けていれば、とても良い事だと思います。
皆さんもまずは、犬との良い関係性を築けるよう目を向けてみてはいかがでしょう?

それでは次回もお楽しみに!

著者プロフィール - 佐久間 力

ドッグトレーナー、ペットアドバイザー。1981年、千葉県生まれ。2006年に専門学校東京スクール・オブ・ビジネス ペットビジネス学科卒業。現在は目黒区のペットサロン「Grunewald(グルーネヴァルト)」で店長兼トレーナーとして勤めている。