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プロが語るお役立ち記事

旭化成専属獣医師の私「佐々木亜子」がペットに関する疑問や相談をその道のプロに直接聞きに行く訪問対談企画「プロの考え、プロのこだわり。」ペットに関する素朴な疑問や役に立つ情報を、獣医師としての視点を交え専門家の先生にお伺いします。

第9回目となる今回は、延べ1万匹以上の猫のお留守番をサポートしてきた、キャットシッター猫の森の山田貴子さんにキャットシッターのお仕事やサービス内容、利用時の注意点など、色々とお話をお伺いしました。

第9回 キャットシッター 山田貴子さん × 獣医師 佐々木亜子

テーマ『キャットシッター』

佐々木
山田さんがキャットシッターのお仕事を始めたきっかけを教えてください。
山田
もともと私はキャットシッターを利用する側、つまりお客さんだったんです。
私の初めての猫を旅行の際に動物病院のペットホテルに預けたのですが、食べない・飲まない・トイレ行かない、という状態になってしまいました。それ以来、旅行を控えていたのですが、ある時「キャットシッター」の存在を知り、利用するようになりました。
その後の引っ越し先にキャットシッターがいなかったので「いないなら自分でやってみよう」と思い立ち、キャットシッターのパイオニアである南里秀子さんのキャットシッター育成講座(現在は終了)を受講、そのまま南里さんの元でキャットシッターとして働き始めました。そして昨年、「キャットシッター猫の森」として独立し開業しました。
佐々木
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、キャットシッターとペットホテルの違いを教えてください。
山田
テリトリーの動物である猫にとって、いつもの環境(お家)でお留守番ができるというのがキャットシッターを利用する最大のメリットであり、キャットシッティングサービスの特長だと思います。
ペットホテルを利用する場合は、移動に加え、人も含めた環境の変化が大きなストレスになることが多いですが、シッターの場合は基本1日1回60分以内の滞在ですので、それ以外は普段通りに過ごすことができます。特に怖がりや人見知りの猫さんなどは、心的負担が少ないので自宅での留守番がお薦めです。
動物病院のホテルとの大きな違いとしては、医療行為が行えないことです。シッターは獣医師ではないので、体調面に大きな不安がある場合はご依頼をお断りすることもあります。
佐々木
私が病院で勤務していた時、ペットホテルを利用中にごはんを一口も食べない猫ちゃんも珍しくはなかったので、キャットシッターを利用して自宅で留守番させることができれば、猫ちゃんのストレスも軽減できそうですね。
佐々木
では、実際にキャットシッターを利用する際の流れを教えてください。
山田
まず、お見積りを提示し、ご承諾いただけましたら打合せに進みます。打合せでは、シッター(私)がご自宅に伺い直接お話しする面談形式をとっておりまして、お客様に愛猫と留守宅を任せられる人かどうかを見極めていただく、シッターの面接の場になります。猫さんとの相性や、シッターが猫さんに対してどのように接しているかも見られる機会になりますね。
それから猫さんの情報や現在の体調を細かく記載する「キャットカルテ」を作成し、食事やお水の用意・トイレ掃除の仕方など猫さんのお世話内容を伺って打ち合わせします。
また、シッティング当日は、猫さんの様子を写真付きで報告する「キャットレポート」をメールでお送りしています。
佐々木
山田さんがシッティングの際に心がけていることは何ですか。
山田
猫さんに普段通りのコンディションで過ごしていただく、というのを最も大切にしています。
私がキャットシッターを利用し始めたころ、帰宅すると愛猫があまりにもいつも通りに出迎えてくれたので拍子抜けしたことがありました。でも実はそれがとても大切なんです。お留守番中も変わらない毎日を過ごしていた証拠ですから。
それから、お家の方が帰宅された瞬間から、気持ちよくスッと日常に戻っていただけるような配慮も心がけております。
佐々木
シッティング中に遊んだりケアをしていただくこともできるのですか。
山田
猫さんの好みや体調、ご機嫌にあわせて対応していますが、決して無理強いはせず、猫さんのペースを最優先にしています。
最近はお年寄りの猫さんの介護ケアを依頼される場合もありますが、こちらもできる限り対応しております。介護生活は、特にお一人暮らしの方は、ひとりで抱え込み心身ともに疲れきってしまうケースもあるんですね。そういう時は無理をせず、シッターを頼っていただきたいなと思っています。
佐々木
近年ペットの寿命が延びているので、これから介護の需要は増えそうですね。
山田
そうですね。ただ、高齢になったときにはじめてシッターを利用するのは、あまりおすすめいたしません。いきなり馴染みのない人に介護されるのは、猫さんにとって大きな負担になりかねませんので。ですから、元気な頃からシッターと猫さん、ご家族の三者がよい関係を築くことはとても大切だと思います。
家族以外で、大切な猫さんのことを知っている人(シッター)がいて、その人が家族と同じように猫さんの世話をしてくれるというのは心強いですし、いざというときにも安心して頼れると思うのです。
佐々木
何かあったときではなくて、事前の備えとしてキャットシッターを探しておくことが大事なんですね。
ではキャットシッターを探す際に、選ぶポイントは何でしょうか。
山田
ほとんどの方がインターネットで探すと思いますが、ホームページの更新がまめにされているか。シッターのプロフィールに顔写真が掲載されているか。動物取扱業の認定を受けているかを見てください(登録証番号の記載が義務付けられています)。
ただ、ホームページは専門業者が文章まで全て作成する場合もあるので、シッターの人柄はブログやSNSなどで見るとよいでしょう。
それから「実生活で猫と暮らしている」「シッター利用経験者」というのも、お客様により近い目線でサービスを提供してくれるかどうかの目安にもなると思います。
佐々木
大切な猫ちゃんと家を託すわけなので、慎重に選びたいですね。
実際にキャットシッターを利用する際、お客様側で何か用意しておくべきものや気を付けることはありますか。
山田
フードなどの消耗品、キャリーバッグと動物病院の診察券、それからトイレとお水を1個追加していただいています。例えば天災時に、私がどうしても訪問できなくなってしまっても、水さえあれば猫は数日間はしのげます。
それから、猫さんにお出かけすること、留守の間にシッターが来てくれること、すぐに帰って来るから安心してねということも、言葉にして伝えてください。そうすることで、猫さんはより安心してお留守番してくださいますので。
佐々木
なるほど。壊れやすい物などをしまっておくだけでなく、猫ちゃんに留守にすると話しておくことも大切なんですね。
最後に、「+わん+にゃん」ご入居者様にメッセージをお願いいたします。
山田
先程もお話しした通り、何かあったときのための備えとしてキャットシッターを探しておくと良いと思います。また、長期間のお留守番に不安を感じる方は、事前に練習をしておくとよいかもしれません。
お客様の中には、はじめは日帰り(長時間の外出)、次は1泊と少しずつ外出日数を増やしていただいて、ご家族が安心でき、猫さんもお留守番に慣れてから、本番(約2週間)のお留守番を迎えていただいた方もいらっしゃいます。
それから、日頃から猫さんとの信頼関係を築くこと。これが猫ヒト共に安心で快適なお留守番をする、最も大切なコツだと思います。