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プロが語るお役立ち記事

旭化成専属獣医師の私「佐々木亜子」がペットに関する疑問や相談をその道のプロに直接聞きに行く訪問対談企画「プロの考え、プロのこだわり。」ペットに関する素朴な疑問や役に立つ情報を、獣医師としての視点を交え専門家の先生にお伺いします。

第8回目となる今回は、横浜市で40年以上にわたりペットや飼い主に寄り添ってきた「おくだ動物病院」の副院長、越久田活子先生にペットのための「テリトリンTタッチ(以下、Tタッチ)」やホリスティック治療についてお伺いしました。

第8回 おくだ動物病院 副院長 越久田活子先生 × 獣医師 佐々木亜子

テーマ『Tタッチ』

佐々木
先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください。
越久田
私が2才頃、飼っていた「のらくろ」という犬が寄生虫由来の皮膚病が原因で亡くなったのですが、その時、父に「私はのらくろを治すお医者さんになる」と言ったそうです。それからずっと将来は獣医師になる、と決めていました。
大学入学後も、卒業したら臨床の道へ進むと決めていたので、1年生の頃から開業獣医師の元で“カバン持ち”をして実習させてもらっていました。ですから、獣医師は私の天職だと思っています。
佐々木
幼いころから迷いなく獣医師を目指されていたのですね。
ところで、病院ではホリスティック治療も積極的に導入されているということですが、いつごろから興味を持ったのですか。
越久田
大学の時に副腎皮質ホルモン剤が体に及ぼす影響について実験していました。その過程で「その子自身の自然治癒能力を高めることが病気にうち勝つには大切だ」と思ったことがきっかけです。
私が開業した頃はホリスティック治療を行う獣医師がほとんどいなかったので、自分で漢方の本などを読んで勉強したりしました。そして、開業当初から「その子自身の、自分で治そうという力を、私たちが手助けしてあげる」というポリシーでやってきました。
私は今まで獣医師として動物医療に携わってきましたが、私が治してあげたと思ったことはありません。私はその子が治ろうとしていることの手助けをしているだけなのです。

先生は動物が大好きで、保護されて里親を探している猫が病院にはたくさんいるそうです。

佐々木
先生が行っているホリスティック治療にはどのようなものがありますか。
越久田
漢方、針灸、レーザー照射治療、ホメオパシー、バッチフラワーレメディ、Tタッチなどです。それと、現在は細胞を元気にする「調圧ルーム」という施設を病院に併設しています。
私のホリスティック治療の先生は「マロ」という犬です。その子は虐待され捨てられていたところを保護されて、私がもらい受けたのですが、そのトラウマからかとても臆病な性格でした。マロのために何かしてあげたいとホリスティック療法を学びました。
マロは晩年には腎不全になりましたが、Tタッチや針鍼や漢方などの自然療法で、最期までごはんをしっかり食べて大往生することができました。12年前のことです。マロが亡くなった後も、ホリスティック療法の勉強は続けています。

先生の師であるマロくん

佐々木
ところで、Tタッチとはどのようなものなのでしょうか。マッサージとの違いを教えてください。
越久田
マッサージというのは、揉んだり指圧で押したりすることで筋肉やツボに働きかけ体をリラックスさせるものです。Tタッチは、皮膚への“非習慣的刺激”、いわゆる指や手でペットの皮膚に優しく円を描きながら撫でるという自然界にはない刺激を与え、細胞の活性化を図ります。これにより免疫力の向上や病気・ケガの自然治癒能力を高めたり、行動問題の矯正に役立つものと考えられています。

看板犬のねおくん。引き取った頃は怖がりでよく吠えていたそう。

先生からTタッチをされているねおくん

佐々木
具体的にはどのようにペットへタッチするのですか。
越久田
まずはペットをよく観察し、どの場所にどんなタッチをするか考えます。それから、自分のまぶたに指をあてて気持ちの良い圧力で優しく皮膚を動かします。「時計の6時の場所から始めて9時で終わる、1と1/4の円を描く」というのが基本のタッチです。
Tタッチをする上で大切なことは、ペットをよく観察し「呼吸を意識すること」「タッチしやすい姿勢を保つこと」「タッチしない方の手はペットの体に添えること」の3つです。
佐々木
思っていた以上に優しいタッチですね。タッチする場所はどこでも良いのでしょうか。
越久田
全身どこにでもできますが、痛がっている部分や傷の部分、何かできている部分は避けてください。また、特に耳は全身のツボを網羅しているのでおすすめです。耳にゆっくりと小さな円を描くことで、ペットが落ち着いてきます。
大切なのは、タッチする側の飼い主もリラックスしていること。「さあ、やるぞー!」と意気込んでしまうと、ペットも緊張してしまいます。“やってあげる”というよりは、一緒の場・時間を共有するような感覚で行っていただければと思います。
佐々木
なるほど。では、健康なペットにとってもTタッチは良い効果がありそうですね。
越久田
もちろんです。日常のコミュニケーションとしてTタッチを行うことができます。「可愛いねー!可愛いねー!」といって撫でまわすのは、興奮させたり緊張させてしまいます。それよりも呼吸と共にゆっくりとタッチしてあげることの方が、ペットは落ち着くのです。
Tタッチは場所も選ばないし、道具もいらない。手があれば、いつでも、どこでもできる、簡単にできるものなので、みなさんもぜひやってみてくださいね。

Tタッチのやり方を動画でもご紹介します!

  • 基本編

  • 耳編

  • 口編

  • 手足編