
旭化成専属獣医師の私「佐々木亜子」がペットに関する疑問や相談をその道のプロに直接聞きに行く訪問対談企画「プロの考え、プロのこだわり。」ペットに関する素朴な疑問や役に立つ情報を、獣医師としての視点を交え専門家の先生にお伺いします。
第7回目となる今回は、ペトグラファーとして月500匹以上のペットの撮影をしているアニマルラグーン㈱代表の小川晃代さんに、ペットを撮影するときのコツやペトグラファーのお仕事内容などについて、色々とお話しさせていただきました。
テーマ『ペットの撮影術』
- 佐々木
- 小川さんがカメラに興味を持ち始めたきっかけを教えてください。
- 小川
- 小さい頃から動物が好きで、中学生の頃は動物の写真入りのテレホンカードを集めていました。ただ、お小遣いでテレカを集めるのは結構大変で…。「自分で動物の写真を撮ってみるのも良いかも」と思って、19歳の時に知人に中古のカメラを譲ってもらって撮り始めたことが、動物写真に興味を持ち始めたきっかけです。
その後、野生写真家の前野先生のところで写真を学び始めて、だんだんと動物の撮影が楽しいと思うようになりました。

- 佐々木
- でもすぐにカメラマンにはならず、しばらく他のお仕事をされていたそうですね。
- 小川
- 高校卒業後はペットショップで働きました。魚や爬虫類などいろいろな生き物を扱っているお店で、飼育のこと以外にもブリーディングやトリミングなど、色々なことを学ばせてもらいました。その間も動物の撮影は続けていたのですが、あくまでも趣味でやっていた感じでした。
- 佐々木
- カメラマンになろうと思ったのはいつ頃ですか。
- 小川
- ショップで働いて4年半くらい経ったころ、「鼻デカ」写真が流行っていました。可愛い!と思って色々と自分で試行錯誤して撮影してみたのですが、なかなかうまく撮れなくて。
それならば、「鼻デカ」写真を撮影している森田先生のところで働いて撮り方を教えてもらおう!と思って、スタジオへ伺いました。でもその時は先生にお会いできなくて、当時そこで働いていた主人に履歴書や作品を託しました。
その後アシスタントとして先生のもとで働くようになってから、カメラマンになるという道も良いなと思うようになりました。

- 佐々木
- ところで、動物を撮影するときに気を付けていることや心がけていることはありますか。
- 小川
- 私が一番気を付けているのは、ペットの体調ですね。
撮影が長時間になると、最初は生き生きしていた子も、疲れて目がトロンとなってしまいます。そうならないためにも、私は撮影前に構図やアングル、光の加減などを決めています。そしてほぼすべてが調整された段階で主役のペットに登場してもらって、短時間で撮影し終えるようにしています。

マヌカンと呼ばれるぬいぐるみを使って、事前に構図やアングルを決めます
- 佐々木
- 小道具もたくさん用意されているそうですね。
- 小川
- 犬の場合は声でも誘導できるのですが、猫の場合は猫じゃらしを使って遊びながら撮ることが多いので、猫を撮影する場合はいつも10種類くらいの素材違いの猫じゃらしを用意するようにしています。

屋外撮影時にペットと背景の高さを調節するときに役立つ丸太(本物!)
子犬・子猫など動き回ってしまうペットを撮影するときは箱に入れると撮影しやすいそう

猫じゃらしも色々な素材のものを用意して、猫を飽きさせません
- 佐々木
- ところで、小川さんの会社ではペットモデルの派遣も行っているそうですが、そもそもペットモデルはどのように選ばれているのですか。
- 小川
- はじめは自分たちでスカウトをしたりもしていたのですが、今は一般募集をして登録していただいています。
ペットモデルに向いているかどうかを見極めるのはなかなか難しいので、まずは私と主人で撮影するときに呼んで、どんな子か把握するようにすることもあります。
- 佐々木
- 犬と猫では、ペットモデルとして必要な条件は変わってきますか。

今回の取材に協力してくれたモデル犬のわんちゃん達
- 小川
- 犬の場合はしつけが入っているに越したことはないですが、基本的には「待て」「おすわり」ができれば、なんとなく撮影できます。クライアントからの希望も様々なので、内容に適した犬を派遣するようにしています。
猫の場合は、動じない性格の方が撮影に向いていますね。あとは、現場で撮影する私や主人、飼い主が協力して頭をフル回転させて、どうやったらうまく撮影できるかを考えます。
- 佐々木
- 撮影されるペットよりも人間の方が大変そうですね。

- 佐々木
- 最後に、ご入居者様へアドバイスとメッセージをお願いします。
- 小川
- カメラはペットとのコミュニケーションのひとつだと思っているので、無理強いするのではなく、遊びながら短時間で楽しく撮ってあげてください。
わんちゃんの場合は、①背景のどこを切り取るのか ②光の加減はどうか ③愛犬の様子はどうか、の3点を考えて撮影すると良い写真が撮れると思います。
ねこちゃんの場合は、室内撮影が多くてマンネリしがちなので、貼ってはがせるタイプの壁紙など小物を使って雰囲気を変えてあげるといつもと違った写真が撮れますので、ぜひチャレンジしてみてください。

次回のにゃんカレッジでは、小川さんのご主人で、数々の猫写真集や猫カレンダーを手掛ける猫じゃらしの魔術師:湯沢祐介氏がお家の中で素敵に撮れるコツを実践を交えながらレクチャーします!
ペット撮影をはじめたばかりだと、飼い主様がスマホやカメラの操作に集中してしまい、待っている間に退屈に思ってカメラ嫌いになってしまうねこちゃんも多いです。
まずは猫カフェのねこちゃん達をモデルに写真撮影に慣れましょう!
Q&A
- Q1. 室内で撮影するときのポイントは?
- A1. 部屋の隅の暗いところで撮るとブレてしまうことがあるので、窓際や照明のそばで撮影したり、明るい時間帯に撮影すると良いです。
- Q2. 屋外で撮影するときのポイントは?
- A2. まずはどの背景を切り取るかを考えます。
お花畑を背景にする場合は、ペットの背の高さによっては、茎しか映らなくなってしまうこともあるので、台などで高さを調整したり、下から煽るように撮ると良いです。
お天気が良い日は順光で撮ってしまうと、ペットが眩しそうな表情になってしまいます。そういう時は少し斜光気味に光が当たるようにしてあげると、表情もよくなりますし、多少陰影がついて立体感も出ます。
撮影者が白い服を着ればレフ板の代わりになってきれいに撮れたりもします。 - Q3. カメラ選びのポイントは?
- A3. 被写体が“動くもの”なので、連写速度とAF精度(ピント合わせの精度)が良いものを使っています。
私もできればミラーレスのような軽い小さいカメラを使いたいのですが、瞬時のピント合わせの精度を重視して、一眼レフを選んでいます。 - Q4. スマホで撮影するとき、アプリは使いますか?
- A4. 撮影時は特に使いませんが、撮った写真を加工するときに使うことはあります。
- Q5. 写真の加工はどの程度行うのですか?
- A5. 明るさを調整したり、トリミングをすることはありますが、基本的には動物自体は加工していません。
おまけ
素人の私とプロの小川さんが、それぞれ手持ちのスマホで撮影してみました!なぜこんなに出来栄えが違うのか、撮影のコツも伺いましたのでご覧ください。
① 窓辺で子犬を撮影
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佐々木 撮影
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小川さん 撮影
コツ:窓の光を取り入れる場合は、半逆光になるように斜めの位置から撮ると、陰影が出て、毛の輪郭もキラキラして見えて可愛く見える
② 壁の窓を背景に犬を撮影
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佐々木 撮影
犬を中心に正面から撮影すると、のっぺりとした印象になる
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グリッド線を出して、中心の4点のうちいずれかに主役を配置すると…
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空間ができて物語性のあるおしゃれな写真が撮れる(小川さん 撮影)