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プロが語るお役立ち記事

旭化成専属獣医師の私「佐々木亜子」がペットに関する疑問や相談をその道のプロに直接聞きに行く訪問対談企画「プロの考え、プロのこだわり。」ペットに関する素朴な疑問や役に立つ情報を、獣医師としての視点を交え専門家の先生にお伺いします。

第13回目となる今回は、愛犬とのお出かけをサポートする会員制犬小屋シェアリングサービス「WanPod」を開発・運用している、旭化成ホームズ 上野山翔太さんに、開発に至った経緯や工夫したこと、現在の実証実験の状況や今後の展望について、お話を伺いました。

第13回 旭化成ホームズ 上野山翔太さん × 獣医師 佐々木亜子

テーマ『WanPod』

佐々木
まずはWanPodがどのようなものか教えてください。
上野山
一昔前であれば、お店の前に犬をつないで待たせている光景もよく目にしましたが、今は盗難や思いがけない事故の可能性があるためおすすめできません。そこで、安全性や快適性に配慮し、旭化成ホームズが獣医師などの専門家と共同開発したスマート犬小屋が【WanPod】です。
上野山
住宅用断熱材や冷暖房がついているので、どの季節でも安心して利用することができます。鍵の開閉・照明オンオフはスマホで操作でき、見守りカメラで愛犬の様子を観察することもできます。温湿度センサーや音のセンサーもあるので、必要に応じて飼主さんに通知が届くようになっています。
佐々木
上野山さんがWanPodを開発されたきっかけは何だったのですか。
上野山
私自身が2頭の犬と暮らしていて、以前家族で旅行に出かけた際ペットホテルに預けたのですが、体調を崩したり、不安そうな様子だったりしているのを見て、かわいそうなことをしたなと後悔しました。
今はなるべく一緒に出掛けるようにしていますが、やはり施設によっては入れないところもあって、不便なことも多いです。そこで、もっと「人にも」「犬にも」より良い解決策があるのではないかと思い、考えたのがWanPodです。
佐々木
ハウスメーカーが犬小屋を開発、というのは面白い取り組みですね。
上野山
ちょうど社内で新規事業をやろうという機運が高まったタイミングで、さきほどお話した愛犬とのお出かけについての課題が頭に浮かび、ハウスメーカーが家と同じような、高性能な犬小屋を作ったら面白いのではないかと思い、社内で提案したところ興味をもっていただき、開発をすすめることになりました。
佐々木
開発にあたり、大変だったことは何ですか。
上野山
他に似たようなものがなかったので、一から考えて作るということが大変でした。色々な製造メーカーを回って、素材の選定から相談・勉強させてもらいました。この大きさの箱を樹脂で作れる工場も限られているので、自分で調べたり、紹介してもらったりして対応いただけるところを探しました。
佐々木
特にこだわった部分や、工夫した部分はどのあたりでしょうか。
上野山
安全性には特に気を付けました。犬と人の暮らしをより良いものにしたいと思って始めたものなので、リスクがあってはいけません。
特に空調については重視していて、エアコンの性能を高めるには極力密閉するのが良いのですが、そうすると酸欠してしまうので、換気とのバランスをうまく取れるように工夫しました。
佐々木
私も獣医師として色々とアドバイスさせていただきましたが、他に専門家の方にご協力いただいたのでしょうか。
上野山
ドッグトレーナーさんに協力いただき、約50頭のわんちゃんに実際にWanPodを使っていただき、わんちゃんの様子や排泄有無について実験をしてもらいました。暴れたり吠え続けたり粗相してしまわないか心配でしたが、実際はほとんどのわんちゃんがおとなしく過ごすことができ、トレーナーさんからも大丈夫そうだと評価いただきました。
佐々木
現在実証実験中ということですが、どのような場所に設置されているのですか。
上野山
越谷レイクタウン、御殿場アウトレット、滋賀竜王アウトレット、幕張新都心イオン、ジ アウトレット湘南平塚に置いています。少し前はマルエツ錦糸町、天王町イオンにも設置していました。※2025年6月下旬時点の情報です
今回の実験や利用者様へのヒアリングを通して、滞在時間の長い商業施設や観光地でのニーズが高いことがわかったので、今後はそういったところをメインに設置場所を増やしていきたいと思っています。
佐々木
個人的には高速道路のサービスエリアにもほしいです。トイレ休憩や食事の際にいつも困るので…
上野山
そうですよね。今後設置したい場所のリストには入っていますので、もう少しお待ちください。それと、わんちゃんOKのテーマパークや観光牧場でも、一部エリアは入れなかったりするので、そういったところにも設置できたら良いのかなと考えています。
佐々木
WanPodを普及していくにあたり、課題は何でしょうか。
上野山
まだ設置場所が少ないことはもちろん、認知度が低いことも課題に感じています。公式Instagramで情報発信しているので、なんとなくモノを知っている方も少しずつ増えていますが、サービスの内容までは理解されていなかったり、なんとなく不安で利用に至らなかったりしています。もっと認知・利用してもらえるよう、無料体験会などのイベントを企画したいと考えています。
佐々木
上野山さんが今後WanPodと目指すペット共生社会はどんなものですか?
上野山
WanPodを色々なところに設置することで、飼い主が気負わず、リードひとつで愛犬と出かけられる社会を作りたいと考えています。いずれは電車やバスにも設置できるようになったら素敵だなと思います。安心・安全に利用いただくために最低限のしつけは必要となりますが、マナーの良いわんちゃんと飼い主様が増えることは、犬の社会的地位向上にもなり、大切だと思っています。今後もWanPodの性能やサービスをアップデートさせながら、人と犬がもっと自由に時間と体験を共有できる共生社会の実現を目指していきたいです。