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【特別企画 第2弾 】ペットの防災(前編) / NPO法人ANICE代表 平井潤子先生

「NPO法人ANICE(アナイス)」で代表を務めている平井潤子先生に”ペットの防災”に関する特別コラムをご執筆いただきました。
今回は「災害の近況と住まいの対策について」、次回は「実際の避難生活について」をお届けします。

平井潤子先生

「飼い主力」と「防災力」のパワーアップを目指そう!

さて、ペットの飼い主のみなさまにお伺いします。
私たちが住む日本列島の周りには、2,000もの活断層があることをご存じですか?
平成に入ってから令和3年10月末までに発生した震度6弱を超える地震(余震含む)の発生回数は、60回にも及んでいます。
(気象庁 震度データベース検索 http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.php による)

関東から東北まで広範囲に大きな被害が出た「東日本大震災」では大勢の人やペットが被害に遭ってしまいましたがあれから10年。今後、太平洋沿岸一帯を襲うと予想されている「南海トラフ三連動地震」や、首都直下地震が発生し、これまで救援活動の拠点となっていた主要都市が被害を受けた場合、はたしてペットも含めた救援活動がスタートできるまでにどのくらい時間がかかるの?という心配の声もあがっています。

さらに最近では、地球温暖化による気候変動で、台風や大雨による風水害も多発しています。「想定外の雨量」というコメントが聞きなれた言葉になるほどに、自然災害が増えているのです。

この機会に、ペットの飼い主のみなさまにお願いします。
災害はとても身近なところにあり、愛する家族とペットを守るために、「飼い主力」と「防災力」を鍛え、準備を開始していただければと思います。

「飼い主力」「防災力」UPのために

まずは、飼い主さまとご家族の身を守る対策から開始してください。それは家族や自分自身を守るだけでなく、ペットを守ることにもつながります。ここでは、住まいの対策について3つのポイントを紹介します。

① 地震被害に対しては耐震対策を見直す

昼間のご自宅は、ペットだけが留守番していたり、高齢のご家族だけが過ごされていたり、さまざまなライフスタイルや家族構成がある中で、まず最初に目指すのは生き残ること。
「人にとって安全な場所は、そこにいるペットにとっても安全な場所」であるという視点で備えてください。

もちろん、家の躯体や建材が災害に強いことが一番ですが、重い家具が倒れたり、大型のテレビがキャスター付きテレビ台ごと室内を走ったり、それが掃き出し窓に突っ込んでガラス割れ、飛散しないように対策します。
これはペットのためだけなのではなく、室内にいる子供やお年寄りが怪我をしないためにも必要な対策です。

②「生存空間」をキーワードに建物や室内の見直しを行う

建物すべてを見直すことが困難でも、ペットが主に過ごす部屋や、夜、家人が休む部屋に対策しておくことで、怪我などの被害を最小限に減らすことができます。

※「生存空間」とは
倒壊した天井や壁が頑丈な家具等を支えにしてできる空間のことで、三角空間ともいいます。
この隙間により構造物に押しつぶされることなく、生存の可能性が得られます。

■住まい(居場所)のチェックポイント目指せ!満点!

1 タンス等の家具が倒れてペットの居場所を直撃しないよう固定してある □ YES
2 キャスター付家具が室内を走り、ペットに怪我をさせないようキャスターをロックし、壁に固定してある □ YES
3 食器棚の扉のガラスや、ガラス窓、動物の飼育ケースのガラス部分が壊れ、室内に散乱してペットを怪我させないように、ガラス飛散防止対策はしてある □ YES
4 戸棚が開き、中の物が飛び出してペットを直撃したり、食器類が破損し避難の妨げにならなったりしないように対策してある □ YES
5 ペットの居場所の周りに、落ちてあたると危険な重量がある置物などはない □ YES
6 夏季の災害で停電しエアコンが停まっても、熱中症になるリスクがない場所(状態)で留守番をさせている □ YES
7 ペットが逃げ込めるペット用シェルターを何か所か用意している※ □ YES

※たとえば、頑丈な家具を固定して、そのそばにペット用のバリケンを置くなどし、何かあったらそこに逃げ込む安全な場所(ペット用シェルター)を用意する工夫であれば、今日からでも始めることができます。

大きな災害に対しては、どんな備えも完璧とはいえないでしょう。
しかし、自宅住居の構造や間取り、インテリアに応じた対策を行っておくことで、そこにいる人も動物も生き延びる可能性を高めることができます。

③ 自分が住んでいる地域の被害想定を確認する

住環境を見直し、生じる被害を想定しておきます。
被害想定を知ることが、的確な対策や行動に結びつき、減災につながります。地元自治体がホームページ等で公開している被害想定を予めチェックし、一時避難所の場所を確認しておきます。また、家族単位、個人単位での避難訓練を実施し、避難場所までの経路を、う回路も含め複数確保しておいてください。

豪雨災害は被害が生じる前に判断し行動することがポイントです。雨がひどくなる前に、暗くなる前に動くよう心掛けてください。
また、「自主避難」は、自宅が壊れた場合に長期間避難所で生活する避難とは対策が異なります。避難したとしても避難指示が解除になるまでの間ですので、まずは一晩~数日程度を乗り切ることを目標にします。

もし、自宅付近に浸水の心配がない、上層階で浸水があっても命に係わる被害が生じない、立地条件から土砂災害の危険がないのであれば、「自宅避難」できる準備を整えておきます。
大勢の人が集まる避難所で周りに気を使うことが、ペットにとっても飼い主様にとっても大きなストレスになりますので、「自宅避難」はペットと飼い主様にとって有効な避難方法の一つなのです。

また、被害想定上、避難する可能性があるのであれば、避難所以外の避難先(実家・親戚・犬友達など)を確保しておくことで、避難所がダメだった時には、プランB、プランBがダメだった時にはプランCと、臨機応変に動けるようにしておきましょう。

次回は、実際の避難生活にはどんな物が必要だっのたか、「飼い主力」、「防災力」をUPさせるグッズについてご紹介します。