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【住】ペットも人も心地よい住まいのヒント|第9回

複数の猫と快適に暮らすための部屋づくり

複数の猫を一緒に飼っている飼い主様も多いもの。猫たちがじゃれあって遊んだり身を寄せ合って眠ったりしている姿は本当に可愛らしいですが、全ての猫に多頭飼いが向いているわけではありません。猫たちのトラブルを避けるために、飼い主様はどんな工夫をすればよいのでしょうか?
今回は多頭飼いをする際に気を付けるべきことや、住まい方の工夫についてご紹介します。

猫には「コアエリア」が必要です

猫好きの方なら一度は「大好きな猫たちに囲まれて暮らしたい!」と思ったことがあるのではないでしょうか。

ただし、同居する猫の数が多いことは、必ずしもすべての猫にとって快適なことではありません。
人間と同様、猫にも様々なタイプがいて、仲間と群れるのが好きな猫もいれば、一人で静かに過ごしたい猫もいます。また猫は一般的にプライバシーを大切にする動物で、自分だけのお気に入りの居場所=「コアエリア」で過ごす時間を必要とします。

部屋の広さに不相応な数の猫を飼ってしまうと、このコアエリアが確保できなくなるので、猫の心身に良くありません。

猫同士の相性の良し悪しにもよりますが、適切な猫の数の目安としては、一般的なアパートやマンションの1LDKの部屋なら1~2匹、2LDKの部屋でも3、4匹にとどめておくのが妥当でしょう(もちろん集合住宅の管理規約の定める数を守ることが大前提です)。

多頭飼いを検討している方は、ご自分のお住いは猫の数に見合った広さかどうか、じっくり考えてみてください。

Point

猫の数と部屋の広さのバランスを考えましょう。

トイレの数や置き場所も猫の数に合わせて調整を

次に注意したいのが、トイレの数と置き場所です。トイレは猫の数+1を用意してあげるのがベスト。
自分専用のトイレ+予備のトイレがあれば、飼い主様が留守をして長時間トイレ掃除をしてあげられないときなどにも、汚れていないきれいなトイレを使える可能性が高いからです。

なお、トイレの大きさは、猫の体長の1.5倍くらいが理想とされています。
意外と場所をとるので、トイレをケージの中に置いている飼い主さんもいるかもしれませんが、ケージは猫にとって食事や睡眠・休息のための場所。できればトイレはケージと離れた静かな場所においてあげましょう。

デリケートな猫は人や他の猫が通りかかると、排泄を途中でやめてしまいます。人がよく通る玄関や廊下にトイレを設置するのはやめましょう。

Point

トイレは頭数+1個必要。静かな場所に設置しましょう。

猫同士の相性が悪いときは早めの対処を

多頭飼いをする上で最も気を付けなくてはいけないのは、猫同士の相性です。
たかが相性と侮ってはいけません。相性が悪い猫と一緒に暮らすストレスが猫の体調に悪い影響を与え、病気に発展することも決して珍しくないのです。

特に猫の場合、ストレスで膀胱の働きが低下することが多く、血尿や頻尿を起こすケースも。血尿の症状で病院に来た猫の飼い主様に「最近、何か生活に変化がありませんでしたか?」と尋ねると「最近、孫が猫をオモチャにしてしまう」「新しい猫を飼い始めた」といった話が出てくることがよくあるものです。

また、ストレスのために毛を舐め続けてしまい、その部分が脱毛してしまう猫もいます。
こういった症状が現れたときはもちろん、猫同士のトラブルが続くようなら速やかに対策を打つようにしましょう。

対策として、最も有効なのは相性の悪い猫同士を同じ空間で過ごさせないことです。部屋が複数ある場合は別々の部屋で過ごさせるとよいのですが、それができない場合は各猫のコアエリアをカーテンやパーティションで見えないようにしてあげる、トイレや水飲み場の場所をできるだけ離してあげるといった配慮が必要です。キャットタワーを設置したり、カゴや段ボールを置いてあげたりして、各猫のコアエリアを分散させる工夫をするのもいいでしょう。

また、相性だけでなく猫の年齢差にも注意が必要です。特に高齢の猫と子猫はなるべく同じ部屋にいさせないようにしてください。遊びたい盛りの子猫にしつこくちょっかいをかけられることが、体力のない高齢猫にとって大きなストレスになってしまうからです。

本来、最もくつろげる場所であるはずの自宅がストレスの元になってしまわないように、飼い主様が日頃から猫の様子をしっかり観察し、猫の変化に気づいたら速やかに対処してあげてください。

Point

相性の悪い猫のコアエリアやトイレはなるべく離して設置しましょう。

著者プロフィール - 今津 幸久

獣医師、成城こばやし動物病院副院長。担当診療科目は総合診療と外科。
1975年生まれ。循環器麻酔外科学会所属、日本大学獣医外科学研究室大学院に在籍、研究生として内臓疾患や腫瘍などを扱う軟部外科を専攻し、腫瘍の切除等について最新の医療技術を学んでいる。診療のモットーは「ていねいな手術、ていねいなご説明」。