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わんわん診察室|第9回

犬のフィラリア症

春になるとフィラリアの予防シーズンが始まりますね!
予防を始める前に血液検査を実施して、毎月お薬を飲ませて…って結構大変だったりしますよね。病院で予防した方がいいと言われたから、フィラリア症がどんな病気かわからず何となく予防している方も多いはず…。

そこで今回は犬の「フィラリア症」について、どんな病気なのか?なぜ予防しなければならないのか?なぜ予防前に血液検査をしなければならないのか?などの疑問に答えていきたいと思います!
そしてフィラリア予防の重要性を再認識していただければ嬉しいです。

フィラリア症ってどんな病気?

フィラリアは成虫になると最大30cmにもなるソーメンのような糸状の寄生虫です。このフィラリアが肺動脈や心臓に寄生することによってフィラリア症が発生します。

フィラリアが寄生することで、血流が妨げられます。そして様々な障害が発生し、放置することで死に至ることもある怖い病気です。

▲血液中のミクロフィラリア(フィラリアのこども)

どうやってフィラリア症にかかるの?

蚊によって媒介されます。

  • フィラリアの幼虫を持った蚊に刺され、幼虫が体内に入ります。
  • 予防薬を投与せずにいると、体内に入った感染幼虫は皮膚の下(筋肉や脂肪の周りなど)で生活しながら脱皮を繰り返します。
  • 準備ができたフィラリアは血管を通って、心臓や肺の血管に移動していきます。ここまでにおよそ半年かかります。
  • フィラリアの幼虫は体内で成虫へと発育し肺動脈・心臓に寄生しミクロフィラリア(フィラリアのこども)を産みます。

どんな症状がみられるの?

【初期症状(軽度)】

  • 呼吸が浅く、速くなる
  • よく咳をする
  • 食欲不振
  • 散歩を嫌がる

【進行症状(重度)】

  • 重度の貧血
  • 寝てばかりいる
  • お腹に水がたまる(腹水)
  • 血尿

多くの成虫はひっそりと暮らしていますが、長い時間を経て、肺の血管や心臓の内面を傷つけていきます。
その結果、体中に血液を送り出す心臓や肺の働きが邪魔されてしまい、「乾いた咳をする」、「運動をいやがる」などの軽い症状から、腎臓や肝臓の働きまで影響が出ることで、より深刻な症状がみられるようになってきます。
ひっそりと暮らしていたフィラリアが突然に暴れだし、急激な症状の悪化がみられることがあります。

フィラリア予防前になぜ検査が必要なの?

予防薬を投与する際、フィラリアが寄生していないことを確認する必要性があります。
血液検査で調べることが可能です。
もしフィラリア成虫より産出されたミクロフィラリアが体内にいることを知らずに予防薬を飲ませた場合、心臓にいる虫体が駆虫されて心臓に詰まったり、急性のアレルギー反応によって最悪死に至る可能性があります。必ず事前に検査をしてから予防をスタートさせましょう。

▲フィラリア陽性

▲フィラリア陰性

予防はどうやってするの?

予防というより実は駆除、という方が近いかもしれません。
フィラリアの予防薬は体内で成長途中の幼虫を成虫になる前に駆除するお薬です。
いくつか種類があり、わんちゃんの性格や薬の値段などを考慮して決めます。

  • 飲み薬タイプ(チュアブルや錠剤)
  • スポットタイプ(滴下剤)
  • 注射タイプ

飲み薬タイプ、スポットタイプによるフィラリア症の予防のポイントは、2つあります。

  • 1ヶ月ごとに確実に薬を投薬すること
  • 薬を始める時期と終わらせる時期を守ること
    (蚊が活動を開始してから1か月後~蚊が見られなくなってから1か月後まで)

フィラリアが体内に入ってから、心臓や肺の血管に移動する準備が整うまでに2ヶ月くらいかかります。フィラリアの感染幼虫が体内に入っても、これらが皮膚の下で生活している間は、犬の体に変化はありません。体内移動を開始する前に体内のフィラリア虫を確実に全滅させる為、1ヶ月に1度、忘れずに投薬することがとても重要です。心臓や肺動脈に入ると予防薬では駆除できません!毎月必ず覚えやすい日を設定して確実に飲ませましょう。

注射タイプは1回の注射で1年間フィラリア予防効果のあるものです。飲み薬タイプ、スポットタイプに比べ高価ですが、毎月の投薬の手間が省けるという利点があります。ただ、まれに副作用でアナフィラキシーを起こすこともあるので注意が必要です。

▲ 1.飲み薬タイプ

▲ 2.スポットタイプ

▲ 3.注射タイプ

もし寄生してしまったら…

フィラリア症の治療は、犬の年齢、寄生状況などを注意深く診察してから、ケース・バイ・ケースで処置が施されます。

発症した犬に体力がある場合は、駆虫薬を投与してフィラリアを駆逐する処置がとられることがあります。しかし、駆除薬を投与した結果、死滅したフィラリアが肺の血管にどんどん詰まっていき、かえって病気を悪化させることもあります。

悪化症例の場合は緊急手術を行うことも。虫の駆除や手術に耐えられないと判断された場合は、症状に対する対処療法を中心に行い、寄生フィラリア数の自然な減少を期待することになりますが、病気が良くなっていく可能性はあまり高くありません。

まとめ

フィラリア症は感染すると、とても怖い病気です。
しかし、しっかりと予防していれば防ぐことのできる病気です。
最善の選択は、“そもそも寄生させない事”。
予防の重要性を再認識し、しっかりと予防しましょう。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。