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わんわん診察室|第8回

寒い時期に注意したい膀胱炎

師走も半ばを過ぎ寒さが厳しくなってきましたが、気温が下がると多くみられるようになるのが膀胱炎!
今回は寒い時期に多く見られる「膀胱炎」に関してお話していきたいと思います。

なんで寒い時期に膀胱炎が多く見られるの?

寒くなってくると散歩に出かける回数も減りがちですね。
冬場は運動量も減るため、喉もあまり渇かず水を飲まなくなります。そして水を飲む量が減るとおしっこの量が減ります。
量が減り濃縮されたおしっこは、尿石症や膀胱炎などのトラブルを引き起こしやすくなるんです。

運動量の低下→飲水量の低下・排尿回数の減少→尿量の減少・尿の濃縮→泌尿器系トラブルが増化

膀胱炎の原因は?

  • 細菌感染
  • 尿石症
  • 基礎疾患の存在:糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、慢性腎臓病など
  • 膀胱のガン

犬の膀胱炎で最も多く見られるのは細菌の感染によるものです。
細菌が尿道を伝わって膀胱内に細菌が侵入し感染を引き起こします。雄に比べて雌の方が尿道が太く短いため、雌の方が細菌性膀胱炎にかかりやすいとされています。
寒くなってきて飲水量が減り、おしっこの量が少なくなると、膀胱内におしっこが溜まっている時間が増え、膀胱内で菌が繁殖しやすくなるんです。
また、尿石症も膀胱炎の原因のひとつです。結晶や結石の存在は、膀胱を傷つけ、炎症、出血を引き起こします。

▲ 尿中に見られた結晶

通常、膀胱粘膜には免疫機構が働いており細菌の感染を防いでいます。
しかし糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、慢性腎臓病など免疫力を低下させる疾患があると細菌が繁殖しやすくなり膀胱炎になりやすくなります。
何度も繰り返し再発する膀胱炎には、これらの病気が隠れている可能性があります。

どんな症状が出るの?

  • 頻尿
  • 血尿
  • 残尿感(何度もトイレへ行き、おしっこのポーズをするけど出ない)
  • 排尿痛(おしっこ中や後に鳴く、おしっこの出口をしきりに舐める)
  • おしっこが全く出ない(緊急)

膀胱炎の主な症状は頻尿と血尿です。
また膀胱に少し尿が溜まっただけで残尿感が出るため、頻繁にトイレに行くようになります。排尿の姿勢をたびたびとりますが、ほんの少ししかおしっこが出ません。
膀胱炎の程度にもよりますが濁りや強いにおいがでることもあります。

膀胱炎では元気や食欲が落ちることはあまりありません。元気や食欲がない場合や、他に症状がある場合は、腎盂腎炎(腎臓に細菌が感染する病気)や尿路閉塞の可能性があるので、すぐに動物病院で診てもらった方がいいでしょう。

どうやって診断されるの?

膀胱炎が疑われた場合は、尿検査を実施します。
尿検査を実施することで尿中の細菌や結晶、血尿、腫瘍細胞の有無などを調べることができます。
また、超音波検査も有用です。結石や腫瘍・ポリープの有無を調べるだけでなく腎臓や前立腺、その他臓器もチェックすることができます。

膀胱炎と診断されたら

細菌性膀胱炎の治療方法は、適切な抗生物質を適切な期間飲むことです。
症状が治まってきても抗生物質を途中でやめてはいけません。再発することが多いので処方された抗生物質は言われた通りに必要な期間飲みましょう。

結石が原因の場合は結石を溶かす種類の療法食をあげたりします。 場合によっては外科手術をすることもあります。

膀胱炎を予防する、悪化させないためには

① 飲水量を増やす工夫を!
寒い時期になるとどうしても飲水量は減ってしまいます。
ドライフードをふやかして与える、ウェットフードを利用する、こまめに新鮮な水に変える、水の器を増やす、肉の煮汁などで香りをつけてみるなど、積極的に飲水量を増やす工夫をしてみましょう。
飲水量を増やすことでで排尿回数を増やし、細菌を膀胱から排出し増殖を抑えることができます。

② おしっこは我慢させない!
おしっこを我慢していると膀胱におしっこがたまっている時間が長くなり、膀胱炎になるリスクが高くなります。
外でしかトイレをしない習慣がついている犬は、散歩を怠りがちになるとおしっこを我慢してしまいます。
台風や大雪などどうしても外に出られない場合などもあると思うので、日頃から家の中でトイレができる習慣をつけておけば安心です。

まとめ

もし膀胱炎になってしまった場合でも、早めに気づいて対処できるように日頃から愛犬の様子はチェックしておきましょう。
もちろん膀胱炎にならないように予防も大事!
お水を十分に飲み、適度な運動をしておしっこをこまめにすることが大切です。
寒くなってきたこの時期、より一層注意してきましょう。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。