知りたい

プロが語るお役立ち記事

わんわん診察室|第7回

犬の急性腎不全

前回は犬の死亡原因で多くみられる、慢性腎不全に関してお話しをしました。今回は犬の急性腎不全に関して説明したいと思います。
慢性腎不全とは何が違うんでしょう?原因や治療法など詳しくお話していきます。

急性腎不全ってどんな病気?

数時間~数日という短期間のうちに、腎機能が急激に低下してしまう状態を急性腎不全といいます。
尿から老廃物を排泄できなくなり、体内の水分量やミネラルバランスを調節することができなくなります。
慢性腎不全は進行しても回復することはありませんが、急性腎不全は元通りではないにしても、ある程度回復する可能性があります。しかし、緊急治療を行わないと命を失うことも少なくない重篤な病気です。

急性腎不全の原因は?

  • 腎臓に毒性を持つ薬剤や食品、植物などの摂取
    (ブドウ・レーズン、人間用の解熱鎮痛剤・ユリ科の植物など)
  • 腎臓への血流量の急激な低下(脱水、出血、ショック、心臓病など)
  • 感染症(レプトスピラ症や腎盂腎炎など)
  • 尿が体の外へ排出されない(尿管・尿道閉塞、膀胱破裂など)

などが原因で発症します。

どんな症状が出るの?

  • 突然ぐったりする
  • 意識の低下
  • 嘔吐・下痢
  • 脱水
  • 尿量の減少(尿量が減少しない場合もあります)

慢性腎不全とは異なり、急激な体調の悪化がみられます。

どうやって診断されるの?

血液検査で尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cre)などの腎機能を反映する指標が著しく上昇していないかどうかなどを調べます。
また、レントゲン検査・腹部エコー検査などで尿路の閉塞がないかどうかもチェックします。

▲ 結石により尿路の閉塞がみられた犬
(※レントゲン写真は閉塞解除後)
腎臓・膀胱・尿道に結石が確認された。

急性腎不全と診断されたら

急性腎不全は致死率が非常に高い病気であり、入院での迅速な緊急治療が必要とされます。
まずは静脈からの点滴治療を行い脱水を補正します。そして病態に合わせて様々な薬剤を使用していきます。
腎障害を起こした原因の治療も行い、毒性のあるものを食べてしまった場合、食べたばかりであれば吐かせるなどの処置、尿道・尿管閉塞が原因であれば閉塞の解除などを実施します。いろんな治療をしても病状がコントロールできない場合、血液透析などの治療を行うこともあります。
治療が奏効すれば、腎機能の回復が望めます。しかし治療への反応が悪い場合、慢性腎不全へ移行してしまったり、残念ながらそのまま命を落としてしまうこともあります。

まとめ

急性腎不全は、症状が出てからの病気の進行がとても早いです。早期に治療ができるかどうかが予後に大きく関わってきます。
腎毒性物質を摂取しないようにするといった予防策を取ることはもちろん、急性腎不全になってしまった場合には迅速に病院で処置を受けることが重要です。

次回は、寒い時期に多く見られる「膀胱炎」についてお話していきたいと思います。

特別企画

石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。