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わんわん診察室|第5回

おしっこの検査でわかること

尿検査の重要性

おしっこにはたくさんの情報が含まれています。
膀胱炎、尿路結石などの泌尿器疾患はもちろん、腎臓病や糖尿病などを早期発見できることもあるんです。
特に腎臓病は血液検査よりも尿検査の方に先に異常が出てくるのでとても重要です。
早期に異常に気付ければ腎臓の保護に努めることができるので、再生機能がない腎臓にとって、これはとても大きいですね。

どんな時におしっこ検査をしたらいいの?

もちろんいつもの尿に異常を感じたら、すぐに検査するのがおススメです。
では異常ってどのようなことでしょうか?
おうちでのチェックポイントをいくつか挙げてみます。

  1. 排尿時の素振り:排尿のポーズはとるがおしっこが出ていない、頻尿、最近そそうが多くなった、など
  2. 尿の回数、量:おしっこの回数・量が多くなった、飲水量が増えた、など
  3. 色調:おしっこの色がいつもと違う(薄い、赤い、オレンジ、キラキラしている、濁っているなど)

こういった異常がみられなくても若い時は1年に1回、シニア世代になったら1年に2回ほど尿検査を健康診断として実施するのがおススメです。

どんな検査をするの?

【検査の項目】

尿比重:水の比重を1とした時のおしっこの重さをあらわします。おしっこの濃さと捉えていただいていいでしょう。犬の正常値はだいたい1.030〜1.045くらいです。
尿比重値が正常より下回る場合は尿の濃縮能力を低下させる腎臓病や、尿崩症や副腎皮質機能亢進症といった内分泌疾患(ホルモンの病気)などが考えられます。
正常値を上回る場合は脱水などが考えられ、尿石症のリスクが上がります。

尿比重計

尿試験紙:おしっこの化学的性状を調べる検査です。

  1. pH:おしっこのpHは食事内容や体の酸-塩基バランスによっても変動しますが、だいたい犬の尿のpHは弱酸性〜中性です。
    pHが酸性またはアルカリ性に傾いている場合、尿路結石ができることがあります。
    また、おしっこに細菌感染があるとアルカリ性を示しやすいです。
  2. ブドウ糖:正常な状態ではおしっこにブドウ糖が出現することはありません。しかし腎臓でブドウ糖の再吸収が追いつかなくなると、ブドウ糖がおしっこに排出されるようになります。この場合、糖尿病や腎機能の低下が疑われます。
  3. タンパク:正常な状態ではおしっこにタンパクが出現することはありません。尿中にタンパクが出現したときは腎機能に問題がある場合や、尿路や生殖器に問題がある場合などが考えられます。
  4. ビリルビン:肝臓・胆道系疾患や溶血性疾患が疑われます。
  5. 潜血:潜血には血尿とヘモグロビン尿の2種類があります。血尿の場合は尿路系のどこかからの出血が考えられます。ヘモグロビン尿の場合、溶血性貧血などが考えられます。
  6. ケトン:飢餓、糖尿病性ケトアシドーシスなどでみられることがあります。

尿スティック試験紙

沈査
肉眼で観察することのできない尿中の固形成分を分離して集め、顕微鏡で観察します。健康な犬では沈渣はほとんど認められません。

1. 細胞成分:尿路または生殖器に炎症がある場合は、炎症細胞である白血球が出現します。
赤血球がみられる場合は尿路系の出血が疑われ、膀胱炎や前立腺疾患、尿路結石症、腫瘍、糸球体腎炎などが考えられます。
沈渣中に上皮細胞が見られることがありますが、その上皮細胞に悪性所見が認められる場合、腫瘍などの可能性が考えられます。

2. 結晶:結石を形成する原因となります。また、尿路の粘膜を物理的に刺激し血尿や膀胱炎を引き起こす原因にもなるので、たくさん出ている場合は注意が必要です。
犬はストルバイト結晶やシュウ酸カルシウム結晶が出来ることが多いです。ストルバイト結晶はおしっこがアルカリ性に傾いていると、シュウ酸カルシウム結晶はおしっこが酸性に傾いていると析出しやすいと言われています。

ストルバイト結晶

3. 細菌:細菌感染による膀胱炎が疑われます。時間が経ったおしっこでは細菌が増殖していることがあるので注意が必要です。

まとめ

以上のようにおしっこからわかることって本当に多いんです。尿検査をうまく利用して病気の早期発見に努めましょう!

次回はわんちゃんの死因として上位を占める「犬の腎臓病」について解説していきたいと思います。

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石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。