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わんわん診察室|第40回

犬の涙やけとは?原因や対処法をわかりやすく解説(後編)

涙が付着することによって目元の毛が茶色っぽく変色してしまう「犬の涙やけ」
前回は症状や原因、好発犬種についてご紹介しました。今回はもし涙やけができてしまった場合の対処法を解説します。

治療

基本的には、涙が過剰にあふれ出てしまう原因を取り除くことが主な治療となります。
それぞれの原因別に対処法をご紹介します。

①涙の流れの異常の問題

鼻涙管がつまっている場合は、管に細いチューブをいれて洗浄し、つまりを取り除きます。
鼻涙管の洗浄処置をする場合は、多くの場合鎮静や麻酔が必要です。
パピーの頃から涙が多い、涙やけが気になるという場合は、避妊手術や去勢手術の時の麻酔を利用して鼻涙管の洗浄を行うのも良いでしょう。

ホームケアとしては、蒸しタオルなどで目頭付近を温めてあげたり、指でマッサージをしてあげるのもおすすめです。

②涙の過剰分泌の問題

● 眼の炎症

角膜潰瘍、ブドウ膜炎、緑内障など眼の痛みを伴う病気によって涙が出ている場合、点眼や内服、場合によっては特殊な処置や手術が必要になることもあります。眼に痛みがありそうな場合には、すぐに病院に連れていきましょう。

● 物理的な刺激

逆さまつ毛など目の周りの被毛による眼表面への刺激が原因となっている場合は、眼周囲の被毛をカットしたり、原因となるまつ毛を定期的に抜いてあげたり、まつ毛の毛根を外科的に除去するなどの処置を行います。
眼瞼腫瘤が原因の場合は、腫瘤の外科的切除を実施します。

眼瞼内反症の治療は内反の程度にもよりますが、軽度の場合は点眼薬による治療を行ったり、重度の場合は外科手術を実施します。

● アレルギー

食事のアレルギーであれば、食事の変更によって涙やけが改善することがあります。花粉やハウスダストなど環境的なものが原因の場合、アレルギーを抑える薬を投与する必要があります。
また近年流涙症と腸内環境との関連が報告されており、涙やけの改善を期待して腸活を行ったり、お腹に優しいフードへ変更を行うのもひとつかもしれません。

③涙の保持機能の低下

マイボーム腺からの脂の分泌を改善させるために、蒸しタオルで温める、マッサージする、抗生剤の投与を行うなどの治療を行います。これにより油脂を柔らかくして、分泌を促します。

涙やけ、放置すると…

涙やけをそのままにしておくと見た目の問題だけでなく、皮膚炎や感染症といった別のトラブルにつながることがあります。

特に涙が常に流れて湿った状態が続くと、目の周りの皮膚に炎症が起きやすくなります。これによりかゆみや赤みが出て、その部分を頻繁に掻くことで症状がさらに悪化する恐れもあります。
涙が酸化して毛に染み込むと、目の周りに嫌な臭いがつくこともあります。

日頃のケア

涙やけを解決するためにはまず、流涙の原因となる疾患の治療を行うことが最優先ですが、治療が難しい場合や普段のケアとして、おうちでのケアも重要です。

長時間涙で毛が濡れたままにならないよう、こまめにコットンなどで優しく拭いてあげたり涙がたまらないようにトリミングサロンなどで目の周りの毛を短く整えてあげましょう。
ゴシゴシ強く拭いてしまうと皮膚炎を起こすことがあるため、優しく拭いてあげることが大切です。
目の下がガビガビに固まってしまっている場合は、濡らしたコットンなどを当ててふやかしてから拭き取り、コームで優しくとかしてあげましょう。

また、アレルギーを起こしやすい犬は、子犬のころから食事の内容に気を付けてあげることが予防につながるかもしれません。

まとめ

涙やけは美容的な問題だけでなく、放置しておけばひどいものになると皮膚炎の原因になったりします。涙やけの原因は様々ですので、気になることがあれば早めに病院を受診するようにしましょう。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。