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わんわん診察室|第4回

実はとてもこわい!歯周病

3才以上のワンちゃんの80%が患っているといわれている歯周病。歯の表面に付着している歯垢の中の細菌が原因で、体に様々な不調をもたらします。

◇どんな病気?

歯を支えている歯周組織が破壊されていく病気です。歯肉が赤く腫れたり、歯のぐらつきが生じ抜けたりします。
口臭が増し、歯茎から出血しやすくなり痛みを伴うこともあります。また、歯根に膿がたまると、眼の下や顎の下が腫れたり膿性鼻汁がでたりすることがあり、重症化すると顎の骨が折れてしまうこともあります。
さらに、膿に含まれる細菌が血管に入って全身の様々な臓器に影響を及ぼすこともあります。
つまり「歯周病」は歯だけではなく全身疾患に発展してしまう可能性のある、こわい病気なのです。

歯肉が赤く腫れ、出血も伴う。痛みを感じることも多く、口を触られるのを嫌がる子も。

炎症が進み、歯周組織が破壊され、歯肉に穴が空いた状態。

◇治療

全身麻酔をかけたうえで、歯科用の器具を用いて歯垢・歯石を取り除いていきます。大事なのは歯周ポケットをキレイにすること。場合によっては抜歯をしたり、外科的処置を行ったりすることもあります。その後、新たな汚れがつきにくくするため、歯の表面を研磨して滑らかにします。
無麻酔で歯石除去を行う場合もありますが、歯の表面の歯石を減らすことくらいしかできず、歯周ポケットにはアプローチできません。また、犬が怖がったり嫌がったりして口の中を傷つけてしまう可能性もありとても危険です。その時の恐怖で口の中を触られることがトラウマになってしまっては元も子もありません。

一度歯石・歯垢除去を行っても、その効果は一生涯続くわけではありませんので、処置後はご自宅でのデンタルケアがとても大切になってきます。

◇犬にはみがきが必要なのはなぜ?

犬は人よりも歯垢が歯石に変わるスピードが早く、なんと3~5日で歯石になると言われています。(人は20日)
歯石は動物病院で麻酔をかけるなどしてクリーニングをしなければ取除けません。歯垢の段階なら家庭で取り除くことが可能なので、歯垢が歯石になる前に1日1回の歯みがきを習慣づけましょう。

◇歯みがきのやり方

いきなり歯ブラシから始めるのはNGです。歯ブラシを口に突っ込まれると嫌がるわんちゃんが大半なので、スムーズに歯みがきをするためには段階を踏んでいくことが大事です。 まずは口を触られるのを嫌がらない様にすることを目標に頑張りましょう。ポイントは大げさなくらい褒めることです。

犬を膝の上にのせるなどして、リラックスした状態で口の周りを指で優しく触れるところから始めます。褒めながら大人しく触らせてくれたらご褒美をあげましょう。これを数週間続け、「口に触れられると良いことがある!」と認識させることが大切です

次に好みのデンタルジェルなどを用いて指で歯や歯肉のマッサージ、ガーゼやデンタルシートなどで簡単な歯磨き、など段階的に歯を触らせることに慣れさせていきましょう。慣れてきたら歯ブラシに移行してみましょう。歯ブラシはヘッドが小さく、毛先が柔らかいものがおすすめです。

まずは1本ずつ、焦らずやっていきましょう。
楽しみながらでないと、犬のデンタルケアは続きません。デンタルジェルやデンタルガムなどをうまく使って、犬を楽しませながらデンタルケアを行えるといいですね。

まとめ

歯周病を軽視していると、大事に至ってしまうこともあります。愛犬を歯周病から守るために、日頃から口内環境に気を配れるといいですね。歯周病は怖い感染症ということを念頭に入れ、少しでも気になる点があったら動物病院に相談しましょう。

次回は「犬の尿検査」について解説します。実はおしっこから得られる情報ってとても多いのです。どんな事を調べてどんなことがわかるのか、詳しくお話ししたいと思います。お楽しみに!

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。