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わんわん診察室|第39回

犬の涙やけとは?原因や対処法をわかりやすく解説(前編)

涙が付着することによって目元の毛が茶色っぽく変色してしまう「犬の涙やけ」
小型犬や短頭種で見られることが多いですが、どのような原因で起こるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、犬の涙やけの原因や症状、起きやすい犬種について解説します。

犬の涙やけとは?

「涙やけ」とはあふれ出た涙の成分が被毛に付着することで、毛が赤褐色に変色してしまう現象を言います。
これは涙中に含まれている「ポルフィリン」という成分が、紫外線や酸化の影響により赤褐色の色素になり被毛を染色すると考えられています。

涙やけは、見た目だけの問題と捉えられがちですが、目の下は常に濡れているので細菌が繁殖しやすく、臭いや感染症を伴う場合もあるので注意が必要です。

涙があふれる原因

涙やけは、涙がたくさんあふれ出てしまい被毛に付着することで起こる現象ですが、その原因として、主に次の3つのことが考えられます。

①涙の流れに異常がある

涙は目の保護や栄養素を供給する役割があり、常にまぶたにある涙腺から分泌されています。
涙は目の表面を潤した後、目頭にある涙管を通り、鼻涙管を通じて鼻・喉へ流れていきます。
しかし先天的な解剖異常や炎症などにより、涙管が細くなったり閉塞したりすると、涙液が鼻・喉に抜けていかず、結果として涙が目からあふれ出してしまいます。

まぶたにしこり(眼瞼腫瘤)があり、慢性的に角膜が刺激されている

②涙の生産量が多い

逆さまつ毛や眼瞼腫瘤、まぶたが内側に反ってしまう眼瞼内反症、異物などにより物理的に角膜が慢性的に刺激されている場合や、傷や炎症で眼に痛みが生じている場合も涙の量が多くなります。

目の炎症などにより起こる「ブドウ膜炎」や「緑内障」は進行すると失明などにつながる可能性がある怖い病気です。涙の量が多いだけでなく、眼に痛みがありそうな場合には、すぐに病院に連れていきましょう。

また、花粉や食べ物、ハウスダストなどによる「アレルギー」が眼に痒みや炎症を引き起こし過剰な涙産生につながることがあります。

③涙の保持機能の低下

まぶたにはマイボーム腺という油分を分泌する腺があり、その油分によって眼の表面で涙を保持し涙が目からあふれることを防止しています。
しかし、マイボーム腺の機能低下などが起こり油分の分泌が低下すると、保持できる涙量が限界を迎え、皮膚表面に流れ出て涙やけを引き起こします。

好発犬種

上記のように、涙やけの原因はさまざまです。

ですが、その原因・特徴から涙やけを起こしやすいと言われる犬種もいます。
愛犬が好発犬種の場合は、涙やけの可能性を視野に入れ、うまくケアできるといいですね。

①毛色の薄い犬

毛色の濃いわんちゃんでも涙やけは起こりますが、白っぽい毛色のわんちゃんは、涙やけによる変色が顕著に見られるので、早めに気づくことが多いです。

②小型犬

チワワ、ポメラニアン、マルチーズ、トイプードル、ヨークシャテリアなど

先天的に鼻涙管の狭窄や閉塞が多く、鼻涙管閉塞による流涙症がよく見られます。
体が小さいため、鼻涙管も細くつまりやすいことが原因と言われています。

③短頭種

パグ、シー・ズー、ペキニーズなど

これら短頭種は解剖学的に目が大きく外に張り出しており、涙を留めにくくあふれたり、目を傷つけやすく涙が増えたりすることがあります。
また眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)を起こしやすいことや、眼の周りの毛が入り込むなどが刺激となって、流涙症を起こしやすい犬種です。

④アレルギーを起こしやすい犬種

柴犬、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ゴールデン・レトリーバーなど

まとめ

涙があふれ出てしまうことで起こる涙やけ。毛の変色などに悩んでいる飼い主様も多いのではないでしょうか。今回はその要因と好発犬種についてご紹介しました。
次回は治療方法やケアについて解説します。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。