分離不安症
コロナ禍の影響で在宅勤務時間が増え、愛犬と一緒にいられる時間が増えた飼い主さんも多いのではないでしょうか。
コロナが徐々に落ち着き初め元通りの生活に戻ると共に、再び犬たちのお留守番時間が増え、犬の分離不安症が発生するケースが増えてきています。
もしかしたら、あなたの愛犬も「分離不安症」かもしれません。
今回は分離不安症の症状や原因、対策などについて詳しくお話していきたいと思います。
分離不安症とは?
「分離不安症」とは不安障害のひとつで、動物が飼い主から離れた時に不安を感じいろいろな問題行動を起こすことをいいます。
思いもよらないことで発症することもあり、犬に限らず様々な動物に見られます。
分離不安症が疑われる場合、早期に対処・トレーニングを行うことで薬物療法に頼らず解決できる場合があります。愛犬のサインを見逃さず、早々に対処することが大切ですね。
では、分離不安症はどういった場合に疑われるのでしょうか?
分離不安症の症状

- お留守番中の破壊行動、トイレの失敗
- 飼い主が外出中支度中に、緊張したり吠える
- 留守中や帰宅後に体調を崩す
- 飼い主のあとを常に追う
- 自傷行為(手足などを舐める・噛む)
こういった症状が見られる場合は分離不安症の可能性があります。
分離不安症が起きる原因
分離不安症になる原因は、単一ではなく様々な要因が絡み合って発症していることが多いです。今回は原因として考えられる主な要因を4つを紹介します。

① コミュニケーション、運動不足
普段から留守番が長く、飼い主との触れ合い不足や愛情不足、運動不足が原因です。
② 飼い主への依存
一緒にいる時間が多い場合によく見られ、構いすぎ・気にかけすぎが原因です。1人で過ごす時間が少ないため、飼い主と急に離れると不安を抱いてしまいます。
③ 環境の変化
引越しや、飼い主に子供が産まれたり、同居犬が増えたりなど、自分にかけて貰う時間が少なくなることが原因です。
④ 過去のトラウマ
留守番中に雷や花火などの大きな音や地震などがトラウマになり、恐怖を感じることにより分離不安症が起こることもあります。
分離不安症の改善策
① 飼い主と離れる時間、距離を作る
在宅中、最初は短い時間から、飼い主と離れて1人でいる時間を作りましょう。
顔が見れる位置でも問題ないので、立ち入れない場所を作り距離を保ちましょう。

② 外出、帰宅は特別なものではないことを認識させる
外出時、飼い主も寂しさから「行ってくるね」「お留守番頑張ってね」などプレッシャーを与えがちです。犬に不安は伝わるもの。お留守番は日常で当たり前に起きる事なので、過度に不安や興奮を与えないようにしましょう。
帰宅時も過度に興奮させず、落ち着いたテンション感で触れ合うことが重要です。
また、外出準備時から吠えたり興奮する子に対しては、いつも通り出かける準備を進めた上でどこにも出かけない日を作ってみましょう。

③ 運動やコミュニケーションを適度に
疲労感を与えることにより、留守番を不安な時間ではなく、ゆっくり1人で眠る時間に変えてみましょう。また普段は行かないような自然のある場所に行ってみるとリフレッシュができ、余裕のあるひと時を過ごすことが出来るかもしれません。
④ 留守中の環境整理
犬の恐怖に繋がるものはできるだけ排除しておきましょう。
よく聞く音(ラジオやテレビなど)を流しておくことで不安感を軽減することも出来ます。
また知育トイなどを用いて、留守番を退屈なものにさせないことも効果的です。
一度に多くの改善策を行うと、愛犬に負担がかかることもあります。ゆっくり少しずつはじめて、だんだん慣らしていくことが重要です。
分離不安症の犬にしてはいけないこと
① 叱る
留守番中に吠えていたことや、トイレの失敗を帰宅後に叱っても特に意味はありません。
何に対して叱っているのかも分からず、逆に帰宅して来た飼い主が突然怒っていて更なる不安や恐怖心を与えます。
② 新しい犬やおもちゃを与える
寂しくないようにと新しい家族を迎える方もいますが、相性が良くなかった場合は更なる負担を強いてしまいます。環境の変化に伴い分離不安が悪化したり、ケンカの原因にも繋がります。
またおもちゃをそのまま置いておくと、問題行動(破壊行動)が起きた際におもちゃを誤飲する可能性があります。誤飲は命に関わるケースもあるので注意しましょう。
まとめ
分離不安症のきっかけや原因は様々です。
愛犬が軽い症状なのか重いのか飼い主さんが判断するのは難しいかもしれません。
また実は、問題行動とする症状が、分離不安症でなく、体の病気のサインのこともあります。
これって「分離不安の症状?」
迷ったらまずは、動物病院などへ相談してみるといいでしょう。
石村先生のわんわん診察室

石村拓也先生プロフィール
シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。
