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わんわん診察室|第3回

シニア犬で注意したい心臓病

ワンちゃんの寿命は近年飛躍的に伸びています。それに伴い、ヒトと同様ワンちゃんも加齢と共に病気が増加してきます。 よく見られるのが心臓病で、ガンなどとともにワンちゃんの死亡原因の上位を占めています。心臓病は初期の段階では症状がわかりにくく、実は元気に見えていても心臓病が始まっている…なんてことも少なくありません。
今回は老齢の小型犬でよくみられる『僧帽弁閉鎖不全症』という心臓病についてお話ししたいと思います。

どんな病気?

心臓は血液を全身に送り出すポンプのような役割をしています。血液には酸素や栄養などが含まれ、それらを全身に送り出し循環させるのが心臓の役割です。
犬もヒトの心臓と同じように、右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋で区切られています。左心房と左心室の間には2枚の薄い膜があり、これを僧帽弁といいます。僧帽弁は左心室から大動脈へ血液を送り出すときに、血液が左心房に逆流するのを防いでいます。しかし僧帽弁閉鎖不全症になると、この弁が完全に閉じることができなくなり、全身へ送り出された血液の一部がすき間から逆流してしまうようになります。これにより充分な血液を全身に送り出せなくなり、疲れやすくなったりします。病態が進行していくと心不全になり命の危険性がある恐い病気です。

こんな様子が出てきたら要注意!

初期の段階では症状はありません。病態が進行していくにつれ症状が出てきます。軽度の症状は、寝てばかりいる、疲れやすい、活動性の低下、咳をするなど。
重度になると、肺水腫(肺に水がたまり呼吸困難になる)、チアノーゼ(舌の色が紫色になる)食欲不振、体重減少、失神などがみられます。

どんなワンちゃんに多い?

老齢の小型犬に多く見られます。
チワワ、マルチーズ、シーズー、ポメラニアン、プードルなどで多く見られますが、あらゆる犬種で発生します。キャバリアは特に多く、若齢からでも発生が見られるので注意が必要です。

診断

初期の僧帽弁閉鎖不全症は無症状なため、毎年の予防接種などの際に聴診により心雑音を指摘されわかることも多いです。
聴診や胸部レントゲン検査、心臓エコー検査、心電図検査などにより診断されます。
検査の結果によって進行ステージが診断され、それにより治療内容や飲むお薬の種類なども変わってきます。

治療

病気の段階に応じて、心臓の負担を軽くしてあげるお薬を飲み始めます。
症状に応じて強心剤や利尿剤などのお薬を組み合わせることも。残念ながら心臓病は進行性の病気で、薬で完治することはありません。お薬は病気の進行をゆっくりにし、症状を抑えてくれます。場合によっては外科手術が勧められることもあります。
心臓病では、人間と同様塩分制限食が推奨されます。塩分を多く含む人間の食べ物などは要注意です。

まとめ

僧帽弁閉鎖不全症はワンちゃんの心臓病の中で最も多い病気です。心臓病が始まっていても、初期の段階ではほとんど気付くことはありません。動物病院で定期的に健診を受けて早期発見に努めましょう。

次回は3才以上のワンちゃんの80%が罹患しているといわれている歯肉炎に関してお話ししていきたいと思います。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。