熱中症
夏本番!暑くなるとわんちゃんの飼い主にとって気がかりなのが「熱中症」ですね。
熱中症は重症になると命の危険があるとても怖い病気のひとつ。
今回は熱中症の症状や対策についてなどをご紹介したいと思います。
熱中症ってどんな病気?
“熱中症“ とは体温をうまく下げることができないことによって生じる様々な症状の総称を言います。
熱中症が起きるのは6〜8月が多いのですが、からだが暑さに慣れていない“初夏”が特に要注意。ヒトは汗をかいて体温を下げることができますが、犬はヒトと同じような汗腺は足裏にしかなく、ヒトと比べると体温調節があまり得意ではありません。
犬は暑さにさらされると、口を開けて大きくハアハアと浅い口呼吸(=パンティング)をして体温を下げようとします。
熱中症の初期にはこのパンティングがさらに早くなり、目や口の中が充血してきます。さらに熱中症が進むと呼びかけに鈍くなったり、けいれんや嘔吐・下痢を引き起こすことも。すぐに動物病院に連絡して受診しましょう。
重篤化すると心拍低下、呼吸不全、ショック状態を起こしやがて死に至るとても怖い病気です。

結膜の充血
① 初期症状
- パンティング
- よだれが大量に出ている
- 結膜などが充血・うっ血している
- 頻脈(心拍数が増加している状態)
② 重篤化した場合
- ぐったりして意識がない
- 下痢・嘔吐。震え
- 意識消失・けいれん発作
- 呼吸困難
熱中症かな?と思ったら
まずは、動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
そしてまずは体を冷やすことが大切です。涼しい場所に移動させ、水を飲める状態だったら水を与えて水分の補給をさせてあげましょう。
水をひたしたタオルで全身を巻き、保冷剤で首、脇の下、股の間を冷やして体温を下げます。扇風機やうちわなどで風を送ると、気化熱により体からの熱の発散が良くなります。早いうちから冷却を行なうと救命率が上がると言われています。
熱中症の予防と対策
① 屋内
熱中症は、室内でもなる可能性があります。
夏にエアコンもつけずに閉め切った部屋は予想以上に温度も湿度も高くなるので、お留守番中でもエアコンをうまく使って室内を涼しく保ち、安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。

首に巻く保冷剤
また、留守番時はいつでも水分を取れるようにしておきましょう。市販で売っているひんやりグッズや凍らせたペットボトルなどを置くのもおすすめです。室温・湿度は犬がいる床付近と部屋の上部とでは異なるので注意しましょう。
② 屋外
散歩は早朝・夕方がベスト。また日が当たるコンクリートやマンホールはとても暑いので危険です!柔らかい肉球がやけどしてしまうことも…。犬はヒトよりも地面から近いので、地面からのふく射熱を受けやすいので注意しましょう。

また、お出かけ時にキャリーケースを利用する方も多いと思いますが、中は熱がこもりやすいので注意してくださいね。こまめに換気したり、保冷剤やタオルで巻いた凍らせたペットボトルなどを入れてもいいと思います。
③ 車内

締め切った車の中に残すことは避けましょう。興奮しやすい犬などの場合、低い気温でも熱中症を起こすことがあります。
自動車移動する場合は、あらかじめ車内を冷房で冷やしておくのもおすすめです。
特に注意が必要な犬種
① 短頭種
犬ではパグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種は、長頭種よりも気道が短いです。夏場は体内の熱をうまく逃がすことができず、熱中症になりやすい傾向があります。
- パグ
- ブルドッグ
- フレンチ・ブルドッグ/li>
- シー・ズー
- ペキニーズ など
② 北方原産種、厚い被毛に覆われている犬種
北方原産種は、寒さには強いですが暑さは苦手です。日本の夏には順応できず、ぐったりしてしまうことも。また、厚い被毛に覆われている犬種は、毛の間にこもった熱を逃がしにくくなっています。そのため、暑くなると上手に体温調整ができなくなってしまうんです。
- シベリアン・ハスキー
- サモエド
- 秋田犬
- ポメラニアン
- シェットランド・シープドッグなど
③ 肥満・高齢動物
肥満体型の場合、体内に熱がこもりやすく首の周りの脂肪によって、呼吸機能が低下しやすくなります。
また、認知機能不全に陥っている高齢動物は、体温上昇ならびに脱水症状を引き起こしやすいため、熱中症に陥ってしまうこともあるので気をつけましょう。
まとめ
なってしまったら命に関わることもある熱中症。大切な愛犬を守るには、ならないための予防対策が1番大事です。
熱中症の予防は、飼い主様にしかできません。万全な対策とともに暑い夏を乗り切りましょう。
石村先生のわんわん診察室

石村拓也先生プロフィール
シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。
