知りたい

プロが語るお役立ち記事

わんわん診察室|第21回

マイクロチップ

みなさんの愛犬・愛猫にはマイクロチップははいっていますか?

動物愛護管理法の改正により、「マイクロチップ装着義務化」が2022年6月1日施行に決まりました。
でも、マイクロチップってそもそもどんなもの?装着にかかる費用や登録方法、安全性などについて、飼い主さんの気になることを解説していきたいと思います。

マイクロチップってなに?

(環境省HPより)

マイクロチップとは「絶対に外れることのない迷子札」のようなもので、個別識別可能な電子タグです。直径約1~2mm、長さ約8~12mmの円筒形の形をしていて、だいたいお米粒を縦に2つ並べたような大きさです。

チップには15桁の数字が記録されており、専用のリーダーで読み取ることが可能です。世界で唯一の番号が記録されておりその番号は書き換えることができないため、確実な個体識別措置として用いられています。

マイクロチップ装着の義務化

  1. 犬猫の販売業者等にマイクロチップの装着・登録を義務付ける
  2. 義務対象者以外(一般の飼い主)には努力義務を課す
  3. 登録を受けた犬猫を所有した者に変更届出を義務付ける

2022年6月より、犬・猫を販売する業者(ペットショップやブリーダーなど)を対象に、マイクロチップの装着と情報の登録が義務付けられることになりました。これら犬猫の販売業者は、犬・猫を取得した日(生後90日以内の子犬や子猫の場合は、生後90日を経過した日)から30日を経過する日までに、環境省で定める基準に適合したマイクロチップを装着しなければなりません。

今回の改正では、一般の飼い主に対してはマイクロチップ装着の義務化はされず、「努力義務」にとどまっています。ただ、装着した場合には登録が義務になりますので注意しましょう。

マイクロチップ登録申請書

マイクロチップは装着しただけでは意味がなく、飼い主の情報をデータベースに登録する手続きが必要となります。
装着されたマイクロチップの識別番号と、飼い主名、住所、電話番号などを登録しておくと、保健所や動物保護管理センターからの問合せに対して飼い主情報を提供し、飼い主を探し出すことができます。
登録が済み次第、データ登録完了通知書が届きます。

ペットショップやブリーダーからすでに登録済みの犬猫を迎え入れる際は、登録時に発行される「登録証明書」をもらい、30日以内に登録情報の変更をする必要があります。

狂犬病予防法とのワンストップ化

マイクロチップのデータ登録は「狂犬病予防法」による登録とは本来別のものですが、マイクロチップが鑑札代わりとなる「ワンストップ化」のしくみ作りも進んでいます。
マイクロチップを装着した犬の情報が指定登録機関に登録されると、指定登録機関から市町村へ登録情報が通知され、狂犬病予防法における「鑑札」の代わりとみなされます。
ただ、狂犬病予防法に基づく登録とマイクロチップ情報を連携させる調整をした場合に限られるので、お住まいの市区町村に確認が必要です。

マイクロチップって安全なの?

マイクロチップの装着による動物への障害はほとんどありません。動物用のマイクロチップは、動物の体内に装着しても副作用などがおきないよう、外部を生体適合ガラスもしくはポリマーで密閉しています。
また、装着されたマイクロチップは、動物の体の中を移動しないように表面に特殊な加工がされています。
欧米を中心に何千万頭もの動物への装着実績があり、安全性についてもさまざまな臨床試験が行われて証明されています。

レントゲン画像にうつったマイクロチップ

マイクロチップを装着していても、レントゲン撮影やCT撮影は支障なく行えます。ただMRI検査ではマイクロチップ周囲において画像の歪みが認められることがあるため、MRIの評価が難しくなることもあるようです。

埋め込み方法

マイクロチップの装着は獣医療行為になりますので、動物病院で獣医師による装着が必要です。

  • マイクロチップインジェクター(埋め込み器)

  •  
  • マイクロチップリーダー(読み取り器)

インジェクターにはやや太めの針がついていて、その中にマイクロチップが入っており、肩甲部の皮下に、ワクチン接種と同様の手技で針を挿入し埋め込みます。
埋め込み後にリーダーで個体識別番号を読み取り、確実に埋め込まれていることを確認します。

  •  

針が太くて痛そうと感じられる飼い主さんも多いですが、一瞬で装着可能ですので、強い苦痛を与えることはありません。また、避妊・去勢手術の際に麻酔下で装着することも可能です。
装着費用に関しては動物病院によって異なりますが、だいたい数千円~1万円のところが多いです。

マイクロチップを入れるメリット

マイクロチップ最大のメリットは、迷子や事故、地震などで飼い主さんと離れ離れになってしまってどこかで保護された時に、マイクロチップが入っていれば身元の確認ができること!これに尽きます。

東日本大震災において、ヒトだけでなくたくさんのペットも罹災しました。震災によって死亡したり負傷したりするなどの直接的な被害は受けなかったものの、飼い主が見つからず放浪状態になったペットも多かったようです。
迷子札や鑑札・狂犬病注射済票を付いていた場合は飼い主が判明しましたが、首輪だけしか付いていなかった犬は0.5%しか飼い主の元へ戻れなかったそうです。(環境省より)

万が一、いなくなってしまった時…

マイクロチップには、国コード、動物種コード、メーカーコード、個体番号等が組み合わされた15桁の世界でただ一つの個体識別番号が標識されています。

マイクロチップを装着した動物とその飼育者のデータは日本獣医師会のデータベースで管理されており、マイクロチップが装着された動物が発見された時には、読みとった個体識別番号をデータベースに照会することによって、即座に飼育者の電話番号等の検索が可能で、飼育者に連絡をとることが可能となっています。

まとめ

もし天災などが起こりペットと離れ離れになってしまった時。何らかの理由で迷子札が外れてしまった時。
ペットが盗難にあった時。家から急に飛び出して行ってしまった時。
…ペットの身に起こり得ないとは言い切れません。

今回の法改正を機にマイクロチップへの理解を深め、努力義務の対象となっている飼い主さんもマイクロチップの挿入を検討してみてもいいかもしれません。

特別企画

石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。