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わんわん診察室|第20回

乾燥の季節がやってきた!犬も保湿が大事です。

寒くなってきて乾燥した季節になってきましたが、愛犬に保湿ケアはしていますか?
犬にも保湿??と思われるかもしれませんが、近年犬のスキンケアが注目されはじめ、中でも保湿ケアはとても重要です。
今回は犬の保湿ケアについてお話しさせていただきます。

皮膚は過酷な外の環境にさらされる最大な臓器

皮膚は体の最も外側に位置し、全体重の約12%を占める最大の臓器です。
皮膚が常にさらされる外の環境には、乾燥、紫外線、微生物、化学物質など、からだにとって不利益な要因が多く存在します。
皮膚はこれらの有害な要因から体内の環境を守ってくれます。そして動物のからだの大部分は水分から構成されていますが、体にとって必要な水分やミネラルを外の環境に逃がさないようにしています。
この皮膚の機能を、『皮膚バリア機能』と言います。

犬の皮膚は実は超デリケート!

体の1番表面にある表皮が、外からの刺激から守る皮膚バリア機能として大切な役割を果たします。
わんちゃんの皮膚。一見してヒトよりも丈夫そうに見えますが、犬の表皮の厚さは実はヒトよりも薄くヒトの約1/3程度とされています。表皮が薄いということは、それだけ外部からの刺激に弱くデリケートだということなんです。

皮膚のバリア機能が低下すると…

もし何らかの理由でこの皮膚バリア機能が低下すると、皮膚は乾燥してカサカサしたり外部からの刺激を受けやすい敏感な状態になり、痒みや皮膚トラブルを引き起こしやすくなります。特にアトピー性皮膚炎のわんちゃんは、他のわんちゃんよりも皮膚バリア機能が弱いと言われており、皮膚トラブルも起こりやすいです。

アトピー性皮膚炎のわんちゃん(皮膚は乾燥し、赤みを帯びています)

そこで保湿!
保湿剤を使用してスキンケアをすることで、皮膚バリア機能を助けることができます。アトピー性皮膚炎のわんちゃんでは、日々の保湿によって皮膚バリア機能を高めてあげることが大切です。

シャンプー後には必ず保湿をしよう!

細菌感染により膿皮症を引き起こしたわんちゃん

皮膚や毛には、余分な皮脂やハウスダストなど、皮膚への刺激となりやすい汚れが付着しています。これらを除去するためにも定期的なシャンプーは必要ですね。
しかし、シャンプーをすると、皮膚から逃げていく水分量が多くなると言われています。
シャンプーの洗浄成分により必要な皮脂まで除去され皮膚バリア機能が障害される可能性があるんです。
そのため、シャンプー後には必ず保湿をすることが大事です。シャンプーと保湿はセットで考えましょう!

どんな保湿剤を選べばいいの?

保湿剤はいわゆる美容液のような役目を果たしており、保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸、リピジュア、アミノ酸、尿酸など)が含まれています。
ローション、スプレー、スポットオン、フォーム、ジェルなどさまざまなタイプの保湿剤がありますので、使用しやすいタイプの製剤を使うと良いでしょう。

掛け流しタイプの保湿剤

たとえば、被毛部はスプレー、腹部はフォーム、肉球はジェルといったように、使用感、部位によって使い分けるとさらに効果的。
スポットオンタイプは濃度が濃く、徐放作用があるため1週間に1回のケアとして用いるなども有用です。

日常的に保湿を取り入れよう

色々なスキンケア用品

保湿によって皮膚のバリア機能を高めることは、アトピー性皮膚炎のみならず、ほかのアレルギー疾患の発症リスクを低減できる可能性も期待されています。
保湿は他の皮膚疾患の治療薬のように即効性がある処置ではありませんが、根気よく続けることで大きな効果が期待できる方法です。

まとめ

犬の皮膚は強い!とよく勘違いされていますが、表皮や角層の厚さからみてみても、ヒトよりもとてもデリケートな構造をしていることが伺えます。健康な皮膚を保つためにも日頃から適切なスキンケア、特に保湿ケアをおすすめします。ぜひ日々のケアの中に保湿を取り入れてみてください。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。