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わんわん診察室|第19回

犬でも起こりうるワクチン接種後の副反応

新型コロナワクチンの一般接種が急速にすすんでいますね。しかし、それと同時に“ワクチン接種後の副反応”というワードも、よく耳にしますね。
ワクチン接種は免疫反応を誘導し、恐ろしい感染症から体を守る効率的な方法です。しかし残念ながら100%安全とは言えず、ヒトと同じように犬もワクチン接種後に副反応が起こる可能性があります。
今回はワクチン接種後の副反応についてお話ししたいと思います。

ワクチン接種による副反応の症状

ワクチンによるアレルギーは、大きく2つの症状に分かれます。
1つは命の危険性もある接種後すぐに反応が現れる即時型のアナフィラキシーショック、もう1つは顔が腫れるなど、しばらく経ってから症状がみられる遅延型のアレルギー反応です。

① アナフィラキシーショック

ワクチン接種後すぐに、けいれんや呼吸困難、急激な血圧低下など生命に関わる反応(アナフィラキシーショック)が見られることがあります。
症状が現れるのは、ワクチン接種から数分(1時間以内)のことが多いです。

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 低血圧
  • 頻脈
  • 虚脱(ぐったり)
  • 呼吸困難

など

② 遅延型のアレルギー反応

ワクチン接種後、症状が数時間で現れる遅延型のアレルギー反応

  • 顔周りや目周りが腫れる(ムーンフェイス)
  • 注射を打った部位が腫れる
  • 皮膚の赤み、痒み
  • 一時的な発熱
  • 打った部位を触ると嫌がる、怒る、痛がる
  • 元気・食欲の消失
  • 下痢・嘔吐

など

アナフィラキシーに対する対処法

アナフィラキシーショックは一刻を争う緊急事態のため、早急に動物病院に連れて行きましょう。
緊急処置として気道確保、エピネフリン、輸液療法、抗ヒスタミン剤、ステロイドなどで治療を行います。いかに早くこれらの処置を行うかが大事で、早急に処置をしないと生命に関わります。

症状が早く出るほど重症になる傾向があり、迅速に適切な処置を行わないと死亡することもあります。できればワクチン接種後30分は動物病院内もしくは病院付近で様子を見てあげるといいですね。

ワクチン接種の際の注意点

  • 体調の良い日にワクチン接種しましょう
  • 何かあった時に対処しやすいように、午前中にワクチン接種をしましょう
  • ワクチン接種後は、15分~30分ほど病院内で様子を見ましょう
  • 接種後は、激しい運動やシャンプーなどは控え、安静にして過ごしましょう
  • 帰宅後、体調の変化があった場合はすぐに病院へ連絡しましょう

アナフィラキシーショックは命の危険もあります。何かあったらすぐに病院へ連絡が取れ、症状への対処・処置ができる時間帯を考えると、午前中にワクチン接種をすることをおすすめしています。

また現在は、抗体価検査の利用も増加しています。
抗体価検査を実施することで、感染症に対するワクチン効果の保有状態を数値化して評価する事ができ、抗体があれば接種しない、なければ接種する、といった選択も可能となっています。
ぜひかかりつけの動物病院で相談してみてくださいね。

まとめ

ワクチン接種によるアレルギー反応、時には命に関わることあります。
ワクチン接種後の体調の変化によく注意し、ご家族もワクチンの副反応に関して正しい知識を持っておくことが大切ですね。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。