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わんわん診察室|第16回

犬が吐くのはどうして?ー吐いた時に気をつけたい病気

犬は人間よりも吐きやすい動物と言われています。でも愛犬が吐いたら心配になってしましますよね…。犬が吐く原因は様々です。嘔吐の種類について把握しておき、いざという時に対処できるようにしておきましょう!

吐く。すなわち “嘔吐” とは?

“嘔吐”とは、食べたものが胃や腸から食道を経て口から吐き出される現象を言いますが、犬が吐く場合には、その背景に色々な原因が隠れています。
まずは愛犬がどんな状況で吐いたのか、どんなものを吐いたのか、その後の様子などをしっかり観察してみましょう。

また、“嘔吐”は、食べた物が胃に到達する前に吐き出してしまう“吐出”と区別が必要です。吐出を食事のたびに繰り返す場合は、食道や咽頭などに異常がある可能性が考えられます。(例えば、食道炎や巨大食道症、食道狭窄、食道内異物など)

巨大食道症の犬

どんなものを吐いた?

● 黄色い液体や白い泡のようなもの

明け方や夕方など、空腹時間が長くなる時間帯に黄色や白っぽい泡状のものを吐く場合は空腹時嘔吐が疑われます。黄色い液体は胆汁で、胃が空っぽになる時間が長くなると胆汁が胃に逆流してしまうことで起こります。対応としては、お腹が空いている時間を短くすること。寝る前に軽くごはんを与えるなどして、胃が空っぽになってしまうのを防ぎましょう。食事の回数や時間帯を調整してみると改善が見られることが多いですが、吐く頻度や量が増えたら、すぐに相談してください。

● 勢いよく食べ、その後フードを嘔吐

大量のフードを勢いよく食べることで、胃がびっくりしてしまったり、胃の許容量を超えてしまった場合にこのような現象が起こります。吐いたフードを再度食べる犬も多いです。1回の食事で食べすぎないよう、回数を増やしたり早食い防止のお皿などをうまく活用するのもおすすめです。

● 血が混ざっている場合

吐いたものに明らかに血液が混ざっている場合はすぐに動物病院へご相談ください。口の中や食道、胃、そのほかの内臓からの出血や、腫瘍からの出血などの可能性が考えられます。

● 茶色いものを吐いた場合

茶色のものを吐いた場合、未消化のドッグフードが胃の中で混ざって茶色になり、その内容物を吐いている場合が考えられます。しかし、食べたものに血液が混ざって茶色くなっている場合もあるので注意しましょう。
嘔吐を繰り返しており、嘔吐物が茶色や赤黒い色と感じたら動物病院に相談することをおすすめします。

● 吐いたものに異物が混じっていた場合

吐いたものに、フードやおやつ以外のものが混入していたら注意しましょう。誤飲や誤食かもしれません。中毒症状や腸閉塞など、場合によっては命を落としてしまうこともあります。(ネギ類、チョコレート、タバコなど)すぐに動物病院に相談しましょう。

嘔吐の原因として考えられるものは

吐く原因でもっとも多いのは急性の胃腸炎ですが、嘔吐はさまざまな病気の症状として起こります。

① 食事

アレルギー、食べ過ぎ、食事内容の変更、脂っこいものの摂取、異物の摂取など

②胃腸のトラブル

胃腸炎、胃潰瘍、炎症性腸疾患、腫瘍、誤飲による異物、腸閉塞、胃捻転、寄生虫

③その他の内臓疾患によるトラブル

膵炎、腎不全、肝不全、熱中症など

④内分泌疾患

副腎皮質機能低下症(アジソン病)、糖尿病など

⑤感染性のトラブル

細菌、ウイルス、寄生虫などの感染
・犬パルボウイルス感染症、犬コロナウイルス腸炎、レプトスピラ症、犬伝染性肝炎
・大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなど細菌性の胃腸炎など

⑥薬物や中毒性物質

薬、毒物の摂取

⑦腫瘍

腺癌、リンパ腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、炎症性ポリープなど

嘔吐以外の症状がないかもチェックしてみましょう。

すぐに病院を受診したほうがいい嘔吐は?

・何度も嘔吐をする
・元気がなく、ぐったりしている
・お腹が痛そうな感じでうずくまっている
・他の症状を伴う(食欲不振、下痢、発熱など)
・嘔吐物に血や食べた物以外の物が混ざっている
・嘔吐物から便臭がする
・熱がある
・吐こうとしているのに何も出ない
などの場合は、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。

嘔吐したものは治療のヒントになります。吐いたものは捨てずに、病院に持参できるといいですね。

家で様子をみてもいい?

嘔吐した原因が明らかで、
・元気と食欲がある
・下痢などの他の症状がみられない
・嘔吐は1回のみ
などの場合は、家で少し様子を見ても良いこともありあます。
ただ、犬の嘔吐は状況によっては危険を伴うことも考えられ、少しでも心配なことがある場合は動物病院の受診をおすすめします。

まとめ

悩んだら自己判断せず病院へ

犬は人間よりも吐きやすい動物です。しかし、犬の嘔吐は状況によっては危険を伴うことも考えられます。
愛犬の様子をよく観察し、いつもと様子が違うと感じた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。