知りたい

プロが語るお役立ち記事

わんわん診察室|第15回

“てんかん”とは、けいれんなどの発作を繰り返し起こす脳の病気を言います。てんかんは人間に限った病気ではなく、犬においてもよく見られる病気です。
今回はわんちゃんのてんかんについて、症状や原因、治療法などをご説明させていただきます。

てんかんってどんな病気?

「てんかん」とは脳の病気で、24時間以上の間隔をあけて少なくとも2回以上発作が認められるものを言います。
てんかんは脳における様々な原因によって発作を繰り返しますが、原因によって以下のように分類されます。

① 特発性てんかん

MRIや脳脊髄液検査など、いろいろな検査をしても明らかな異常が見つからないタイプ。特発性とは、原因がよくわからないことを意味します。犬のてんかんのほとんどは、この特発性てんかんで遺伝的な要素が関連していると考えられています。特発性てんかんでは「てんかん発作」以外に全く症状がないことが特徴です。
また、初めて発作を起こした年齢が1〜6歳であることが多いです。

② 構造的てんかん(以前は、症候性てんかんと呼ばれていました)

頭蓋内もしくは脳に何らかの異常があり、てんかん発作を引き起こすタイプ。脳梗塞や脳出血の後遺症、脳炎、脳の外傷、脳腫瘍、水頭症などにより引き起こされます。
発作以外にも他の症状があることが多いです。

水頭症の好発犬種のチワワ

どんなてんかん 発作があるの?

  • 全身がピーンとつっぱりけいれんする
  • 意識を失い、全身をガクガクさせ、けいれんする
  • 身体の一部(四肢、体幹、顔面)などが部分的にピクピクする
  • 突然、力が抜けたようにバタッと倒れる
  • 突然、意識が短時間消失する/li>

など様々な症状があります。
発作の後は、ボーッとしたりふらついたりしますが、しばらくすると元に戻ることが多いです。
発作は数分で終わることがほとんどですが、下記の場合は速やかな受診が必要です。

① てんかん重積

1回のけいれん発作が5分間以上続いた場合、あるいは意識が正常に戻る前に2回目以降のけいれん発作が起こった場合を言います。

② 群発性発作

24時間以内にけいれん発作が2回以上起こる場合を言います。

長時間にわたる発作重積は、脳自体の損傷に加え、心臓、循環、筋肉、腎臓、呼吸および肺に障害を起こし、最終的に死に至る場合もあります。すぐに動物病院へ連れて行きましょう。

てんかん発作が起こったら

愛犬に急にてんかん発作らしき症状が起こったら、びっくりしてしまいますよね。特に初めて発作を見たときは慌てふためいてしまうことが多いです。

大体の発作は数分で終わります。なので、発作が起きたときは手を出さず冷静に対処し見守りましょう。周囲の危険なものや子供などを遠ざけたり、身体の周りにクッションなどを起き、もし頭や体をぶつけても痛くないようにしてあげましょう。
発作が終わったら、本人が自ら動き出したり目がしっかり合うようになるまで静かに見守りましょう。
初めて発作を起こした場合や重積発作などの場合は、動物病院を受診しましょう。

てんかんはどうやって診断するの?

動物病院では、まず発作がどのようなものであったか詳しく問診が行われます。飼い主さんが目撃した「発作」が本当にてんかん発作なのか、どういう風に発作が始まったのか、発作後の状態などを聞かれます。なので愛犬が発作を起こしているとき、その様子をスマホ等で動画撮影しておくことをおすすめします。

特発性てんかんは、基本的に除外診断で診断します。
発作を引き起こすような他の頭蓋外疾患(低血糖、低カルシウム血症、門脈体循環シャント、腎不全、中毒など)がないかどうか血液検査や尿検査などを実施します。

次に頭蓋内に何か問題がないかMRI(CT)検査、必要に応じて脳脊髄検査、脳波検査を実施します。脳腫瘍、脳炎、水頭症など、原因となる病変が見つかれば“構造的てんかん”、見つからなければ、“特発性てんかん”と診断されます。

てんかんの治療法は?

てんかん治療の目的は、

  • 発作の繰り返しによって脳が壊れることを防ぐ
  • てんかんの重篤化・難治化を防ぐ
  • 犬や家族のQOLの維持

などが挙げられます。

発作が全く起こらず、副作用もでないのが理想的ではありますが、実際的には“日常生活に明らかな異常やQOLの悪化を伴わずに、発作頻度を6ヶ月に1回(少なくととも3か月に1回)以下の頻度でコントロールするすること”を治療目標とするのが現実的です。
そして以下のような場合、てんかん治療を開始することが多いです。

  • 6か月に2回以上のてんかん発作があるとき
  • てんかん発作重積あるいは群発発作の場合
  • 発作の頻度や持続時間が悪化している場合
  • 構造的てんかんが明らかな場合

治療は基本的に内服薬で、一旦開始したら生涯継続する必要があります。
抗てんかん薬は一般的にはすぐに効果は現れません。定期的な投薬により薬の血中濃度の安定が必要となります。最近発作がないからといって、勝手に投薬を止めたり薬の量を減らしたりするのは厳禁です。
また、人間用に開発されたてんかん薬の中には、犬猫では使用できないものもあります。気をつけましょう。

まとめ

てんかん、特に特発性てんかんは、基本的には治る病気ではありません。そのため、その子の一生涯をてんかんと付き合っていくことが多いです。
てんかんに対する知識を深め、もしてんかんになってしまった場合でも慌てず、適切に対処できるようにしていけるといいですね。

特別企画

石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。