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わんわん診察室|第14回

犬の誤飲・誤食

わんちゃんは時に人間が思ってもみないものを食べてしまうことがあります。誤食・誤飲は病気ではありませんが、食べたものによってはよっては命に関わることもあるんです。
今回はわんちゃんの誤飲・誤食についてご説明させていただきます。

誤飲・誤食とは

誤飲・誤食とは文字通り、わんちゃんがが誤って飼い主さんの身の回りの物を飲み込んだり食べてしまうことを言います。
症状は、飲み込んだり食べたりするものによって様々です。

① 物理的に詰まってしまったり、内臓を傷つける可能性があるもの
  • ボール
  • おもちゃ(ぬいぐるみの綿など)
  • たね(梅干しの種、果物の種など)
  • とうもろこしの芯
  • 衣類(靴下、ストッキング、タオルなど)
  • 日常のもの(ボタン、電池、ティッシュなど)
  • ひも、リボン
  • 焼き鳥のくし、つまようじ
  • 手羽先の骨
など

胃内異物(ボール)

胃内異物(安全ピン)

わんちゃんの大きさと異物の大きさによっては、無症状のまま便とともに排出されることもありますが、場合によっては気道や食道、胃や腸に異物がつまり閉塞を引き起こすことがあります。

もし気道が閉塞してしまった場合は、呼吸困難になるため早急な気道確保が必要となります。
また、異物が胃内に留まったままであったり、腸閉塞を起こしてしまっていたりすると、嘔吐、食欲不振、腹痛などの症状が見られます。
また、焼き鳥の串やつまようじ、ボタン電池などは飲みこんでしまうと、体の中で内臓を傷つける恐れがあります。

② 中毒を引き起こす可能性があるもの

人が当たり前に食べているものの中には、わんちゃんが摂取すると中毒を引き落としてしまうものもあるので、十分な注意が必要です。

中毒を引き起こす可能性があるもの

① たまねぎ・ネギ・ニラ・にんにく

これらの食材に含まれる成分は、犬の血液中の赤血球を破壊し貧血を引き起こすと言われています。生でも加熱しても与えてはいけません。煮汁も気をつけましょう。
症状としては、無気力・呼吸困難・嘔吐・下痢・茶色い尿、黄疸などが見られます。

② チョコレート

カカオに含まれるデオブロミンと呼ばれる成分には、犬の心臓・中枢神経を刺激し、不整脈や心拍上昇などの症状や発作を引き起こす可能性があります。カカオ含有量の多いビターチョコレートなどには、特に注意しましょう。
症状としては、嘔吐・下痢、興奮、多尿、痙攣などがみられます。

③ キシリトール

キシリトールの摂取により、血糖を下げるホルモンであるインスリンが分泌され、低血糖を引き起こしたり、肝臓に障害が起きる可能性があります。

④ ぶどう・レーズン

急性腎不全を引き起こす可能性のある果物です。
中毒のメカニズムに関してはまだ解明されてないところも多く、中毒量も不明ですが、少量でも与えるべきではありません。食欲低下・元気消失・嘔吐下痢・腹痛・おしっこの量が減る・脱水などの症状が見られます。

⑤ 人間のクスリ(解熱鎮痛薬など)

例えば、ヒトの風邪薬の70%以上の製品に含まれている“アセトアミノフェン”。犬では安全域が狭く、1錠飲んでしまっても中毒を引き起こすことがあるんです。

病院ではどんな処置をするの?

摂取した異物の種類や量、摂取後経過している時間によって治療法は異なります。

① 比較的小さな物の場合、飲み込んでからの時間がそれほどたっていなければ、催吐処置により吐き戻しが可能な場合があります。吐き戻せないものの場合は内視鏡での摘出や開腹手術により摘出を行います。

② 中毒を引き起こすようなものを食べてしまった場合は、催吐処置を行ったり、点滴で血液中の濃度を薄めたり、解毒剤を使ったり、吸着剤で吸収を抑えたり等の治療を行います。

誤飲を防ぐために

① 誤飲する機会を与えない・状況を作らないようにしましょう

  • 口にしてほしくないものは犬が届かない場所に置く・しまう
  • ゴミ箱はふたつきに
  • 生活用品やそれに似たものは与えない(スリッパ・タオル・靴下など)
  • 嚙んでもいいおもちゃを与える(壊れないもの、サイズにも注意)
  • おやつのサイズにも注意(デンタルガムなどは丸飲みしないように)

② 日頃から口から物を出すコマンドを練習しておく

「ちょうだい」と言ったらくわえているものを離す練習をしたり、対象物から遠ざかることを覚えておくといいですね!
わんちゃんが飲み込めそうな物で遊んでいる時にそれを取り上げる場合は、いきなり取り上げるのではなく、何かに気をそらせた隙に行いましょう。無理やり取り上げようとすると、取られないように慌てて飲みこんでしまうこともあるので注意です。

まとめ

もし愛犬が異物を飲み込んでしまった場合は、慌てず状況を把握し、すぐに動物病院に相談してください。
また、中毒を起こす可能性がある食品や薬物の場合は、誤食・誤飲したと思われる現物とその成分表などを持っていくと治療方針の目安となりますので、それを持参することいいですね。

もちろん誤飲・誤食はないに越したことはありません。起きてしまってから対処するのではなく、出来るだけ起こさないよう日頃から環境を整えてあげるのが大切です。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。