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わんわん診察室|第12回

下痢① 概要

愛犬のうんち、毎日チェックしていますか?
“うんちは健康のバロメーター”とも言われるくらい、健康状態を教えてくれる大事な情報源。もし愛犬が下痢をしている場合、何らかの不調が隠れているかもしれません。

今回は下痢ってどういう状態をいうの?動物病院に連れて行った方がいい症状は?おうちでの対処法などを詳しくお話ししていきたいと思います。

犬の下痢とは?

下痢とはうんちの中に含まれる水分の量が何らかの原因により増え、柔らかくなってしまった状態をいいます。
食べ物は胃や腸で消化されて、うんちとなって体外へ排出されます。腸は水分の分泌と吸収を繰り返して、うんちを一定の水分量になるよう調整します。このバランスが崩れると、水分量が多いいわゆる“下痢”になってしまうんです。

下痢の種類

  • 軟便
    正常な便よりやや水分量が多く、ソフトクリームのような柔らかい便。
  • 水様便
    水っぽくサラサラしている便。体が急激に脱水するので注意が必要です。
  • 血便
    便に赤い血液が混じっている便。
  • タール便(黒色便)
    血液は時間が経つと赤から黒褐色へ変化してきます。胃や小腸など上部消化管で出血がみられると、排便までの間に血液が変色し黒っぽいタール便(黒色便)となります。
  • 粘膜便
    便の表面に粘液性のゼリーのようなものがついている便。大腸の粘膜や粘液が剥がれ落ちて排出されたもの。大腸などで炎症が起きている可能性があります。

下痢の原因はなに?

寄生虫や細菌などによる感染性下痢、毒物や異物の摂取、食事やストレスなどによる下痢、内分泌疾患や肝疾患、腫瘍などの全身性疾患の一症状としても起こることがあります。

  • ① 食事(食べすぎ、体質にあわない、食べ慣れないものの摂取、脂肪分や水分の過剰摂取、傷んだものを食べた、異物誤飲、中毒性物質の摂取など)
  • ② 精神的なストレス(引っ越しやペットホテルなどの環境の変化など)
  • ③ 感染症
    • ▲ 回虫卵

    • ▲ 鞭虫卵

  • ④ 内臓疾患(膵炎、肝疾患、炎症性腸疾患、消化管腫瘍など)
  • ⑤ 食物アレルギー

など

こんな症状はすぐ病院へ

下痢の原因は多岐にわたり、緊急性も様々です。
下記のような症状がある場合は、動物病院を受診した方がいいでしょう。

  • 元気がない
  • 頻回の下痢
  • 食欲が低下している
  • 体重が減っている
  • 嘔吐や震えなど他の症状が見られる
  • 子犬、老齢犬

免疫力が低い子犬や老齢犬の場合、急激に脱水症状を起こしたり症状が悪化することがあるので注意しましょう。

動物病院を受診する際は、便の状態をなるべく正確に伝えられるようにしましょう。

  • 排便頻度
  • 臭い

など、よく観察しておきましょう。

動物病院で行う糞便検査では、寄生虫感染の有無や消化状態や細菌叢のバランスなどをチェックすることができます。
新鮮な便ほど検査精度が上がります。乾燥しないないようにラップなどに包んで持っていくのがおすすめです。

家での対処法・予防法は?

下痢をしているときは、胃腸はとても敏感になっています。腸の中を消化物が通過するとそれが刺激になってしまうこともあります。
軽度の下痢であれば、半日〜24時間ほど胃腸を休めれば回復が早いことも多いです。その後、すぐに元のフードに戻すのではなく、消化に良いものを少しずつ与えていきます。
ドライフードを水でふやかすなどお腹に優しくしてあげるといいですね。

下痢の時は脱水傾向になりやすいので、嘔吐などがなければお水はいつも通り与えても大丈夫です。
ただ、冷たすぎるお水だったり、一気にたくさん飲んでしまったりするとそれもまた刺激になりますので注意しましょう。

また、予防法としては

  • 食事は1度にたくさんあげない
  • 消化に良い食事を与える
  • フードを変更する際は、1〜2週間かけて徐々に新しいフードの割合を増やしていく
  • 余計なストレスをかけない
  • お腹の冷えに気をつける
  • きちんとワクチン接種をする

などに注意してみましょう。

パルボウイルス腸炎などの感染症は、激しい下痢を引き起こす死亡率の高い病気です。ワクチンで予防できるものなので、必ずワクチン接種しておきましょう。

治療法は?

  • ▲ 静脈点滴による輸液療法

  • ▲ 整腸剤と止瀉薬

動物病院での下痢の治療は原因によって様々です。
たとえば寄生虫が原因の場合は駆虫薬によって治療しますし、食物アレルギーが原因の場合はアレルギーを起こさない食事への変更を行います。

そして、必要に応じて止瀉薬や整腸剤、抗生物質、輸液療法を取り入れたりします。
止瀉薬には粘膜保護、消化機能異常の改善。整腸剤には腸内細菌叢を整え、消化吸収を正常化するはたらきがあります。

まとめ

下痢に関してはほとんどが対症療法(止瀉薬、整腸剤、輸液両方など)により短期間のうちに症状が落ち着くことが一般的です。
しかし症状の改善が乏しく、下痢が続く場合もあります。人間もそうですが、下痢が続くとわんちゃんだってつらいですよね…。
様子を見続けることはせず、動物病院を早めに受診してくださいね。

次回は、愛犬の下痢がなかなか治らない時に考えられる病気について詳しくお話ししていきたいと思います。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。