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わんわん診察室|第11回

愛犬の眼が白くなっていたら 犬の白内障について

愛犬とアイコンタクトを取った時、眼が白っぽくなったなあ…と感じたことはありませんか?
それ、もしかしたら白内障かもしれません。

今回は犬の白内障の症状や治療法、もし白内障になってしまった時の対処法などを説明させていただきます。

白内障ってどんな病気?

眼の中のカメラのレンズのような働きをしている透明な「水晶体」と呼ばれる部分が白く濁る病気です。
水晶体は眼の中に入ってきた光を屈折させ、網膜に届ける役割をしています。
水晶体が白く濁ると、視界がぼやけ視力に影響を及ぼします。
進行すると失明する病気です。

白内障の症状は?

物や壁にぶつかったり、つまずいたりすることが多くなります。このような症状ははじめ暗い場所で現れ、白内障が進行するに従い明るい場所でもみられるようになります。
また、視力が低下すると触られた時にびっくりしたり、恐怖心から攻撃的になる場合もあります。

ただ、犬は嗅覚や聴覚が発達している動物なので、慣れ親しんだ場所ではこのような行動異常がわかりにくい場合もあります。
白内障が進行するとぶどう膜炎や緑内障などの合併症を起こすことがあります。これらは強い痛みを生じるので注意が必要です。

白内障はなんでなるの?

白内障の発症の詳しいメカニズムは分かっていません。
ざっくりと2つに大別され、「先天性白内障」と「後天性白内障」に分けられます。

① 先天性白内障→遺伝的素因によるもの

② 後天性白内障→加齢性の変化、紫外線の浴びすぎ、糖尿病、栄養不足、外傷などによるもの

人の白内障の7割は加齢性です。しかし、犬も同じと考えてはいけません。
犬の白内障は加齢によってゆっくり進行するものもありますが、実は若いうちから発症することの方が多いんです。
犬の白内障の症状手術症例の約6割が5歳以下というデータがあります。

白内障の好発犬種

  • トイ・プードル
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • マルチーズ

犬において視力が障害され手術が必要になるほどの白内障は、若齢で発症することのほうが多いです。
好発犬種では、若いうちから積極的に眼科の定期検査を行い早期の発見に務めた方が良いでしょう。

白内障の治療法は?

白内障の治療は、残念ながら薬で治すことはできません。
根本的な治療は外科手術となります。

〈内科的治療〉
内科的治療は加齢性に生じた初期の白内障が対象です。進行を抑える目的で点眼薬が使用されます。残念ながら視力が障害されている場合、視力を回復させることはできません。

〈外科的治療〉
真っ白になってしまった水晶体を透明にするためには、外科手術が唯一の治療法です。
一般的には、眼科専門医がいる動物病院で実施することを推奨します。
手術方法はいくつかありますが、混濁した水晶体を細かく砕いて除去し、人工水晶体(眼内レンズ)を挿入する方法が多いです。

人と犬の白内障手術の違い

白内障という病気は人において、特にご年配の方にとってはありふれた病気の一つと言えるでしょう。人の白内障の手術は日帰り手術で簡単に治療ができるというイメージが定着しているかもしれませんが、犬の白内障の手術は人間と同じようにはいきません。
手術に際しては、全身麻酔のリスクや術後の頻回の点眼治療、合併症のリスクなども考慮しなければなりません。

もし愛犬が白内障になってしまったら

若齢性や糖尿病性の白内障は数日のうちに急激に進行することが多いです。
白内障と診断されたら、早めに白内障手術が実施可能な動物病院を紹介してもらうといいでしょう。

白内障が進行して視覚障害が発生した場合、行動は制限されますが犬は聴覚や嗅覚などが発達しています。他の器官に補われることにより、慣れれば通常の生活を送れることも多いでしょう。

〈日常での注意点〉

  • 生活環境を急に変えない
  • 飲み水、食事の容器はいつも同じ場所に置く
  • 基準点となる場所(水飲み場や寝床など)を決め、迷った時はそこに戻るよう導く
  • 段差のある場所はゲートなどでガードする
  • 運動不足にならないように毎日規則的な運動をする

まとめ

残念ながら、白内障の予防薬はありません。
しかし、予防が難しくても出来るだけ早く病気に気づいてあげることは可能です。
訴えが出来ないわんちゃんを守るためにも、日頃から目のチェックをし定期的に健康診断を受けましょう。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。