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わんわん診察室|第10回

ノミ・マダニ

気温が高くなってきて、お出かけにいい季節になりましたね。ですが、暖かくなってくると虫たちも活発になります。体の外に寄生するノミ・マダニはとくに春先から秋にかけての暖かい時期に大量発生します。
皆さんの愛犬はノミ・マダニ予防、しっかりできていますか?
もしノミやマダニに寄生されてしまった場合、様々な怖い病気を引き起こすこともあります。

今回はノミ・マダニはどんな虫なのか、寄生によって起こる怖い病気、予防方法などについて詳しくご説明させていただきます。
そしてノミ・マダニ予防の重要性を再認識していただければ幸いです。

ノミ・マダニってどんな虫?

〈ノミ〉

ノミはたくさんの種類がいますが、日本の犬猫に寄生するノミの多くはネコノミです。体長は約3㎜と小さく、とてもすばしっこく毛の間を逃げまわります。
また、ノミはものすごいジャンプ力を持ち、自身の体長の約100倍もの高さを飛ぶことができます。このジャンプ力により、動物に飛び移り寄生・吸血します。

ノミは完全変態する虫で、卵→幼虫→サナギ→成虫と4段階に変態します。この4段階に変態する点がノミの厄介なところで、発育段階により効かない薬があること、成虫だけ取り除いてもすぐに卵から孵化・繁殖することがノミの駆除が簡単にはいかない要因になっています。ノミの増殖スピードは驚異的で、ノミの雌は1日に50個ほど卵を産みます。13℃以上の環境であればネズミ算式にどんどん増えていきます。

〈マダニ〉

マダニは他のダニと比べるととても大きいダニです。成長段階や吸血の有無で大きさや形態を変化させ、吸血するとその大きさは1㎝を超えます。
マダニは長時間吸血できる吸血様式をとっています。クチバシを皮膚に差し込みセメントのようなものを分泌し、皮膚に強固に固定し吸血を行います。
もしマダニを見つけても無理に引っ張ってはいけません。安易に引っ張るとクチバシだけが皮膚に残り、化膿や炎症の原因となります。

ノミ・マダニはどこにいるの?

〈ノミ〉

ノミは室外・室内問わず生息が可能であり、温暖な環境を好みます。
室内:愛犬が好んで生活している場所、例えばソファやベッド、フローリングのすきまなどのを好みます。
室外:暗くじめっとしたところや草むらに潜んでいます。野良猫には高確率で寄生しています。

〈マダニ〉

マダニは、郊外の山や森の草むらや、広い公園や河川敷の草むらなどに生息しています。こういった森林だけはなく、市街地の植え込みや公園の茂みにも生息しているので注意が必要です。
草むらなどに潜み、そばを通りがかった犬に飛び移れる機会を狙っています。

わんちゃんへのノミの被害

アレルギーを起こしたり、病原体をうつすことも…

① ノミアレルギー性皮膚炎

ノミは吸血する際に唾液を出します。動物がこの唾液にアレルギー反応を起こすと皮膚炎が生じます。これをノミアレルギー性皮膚炎といいます。
ノミアレルギーは非常に強い痒みを伴い、少数の寄生でも症状が出るようになってしまいます。アトピー性皮膚炎の子では、ノミ寄生により症状が強く出てしまうので、予防がとても重要です。

瓜実条虫ウリザネジョウチュウの寄生

体長50cm以上になることもある瓜実条虫いわゆるサナダムシです。この瓜実条虫の幼虫の卵を宿したノミを食べてしまうことにより寄生します。
ノミが寄生すると痒みのため、動物は体を舐めます。これらグルーミングにより瓜実条虫が体内に入り込むのです。
動物のお腹に入った瓜実条虫は、下痢や嘔吐、体重減少などを引き起こします。

③ 貧血

ノミの成虫は1日に約10μlの吸血をします。1匹のノミの吸血量が少量でも、たくさん寄生された場合吸血量はかなりの量になり貧血を起こします。特に小型犬や子犬は要注意です。

マダニが媒介するわんちゃんの怖い病気

死に至る恐ろしい病気も…

① SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

マダニを媒介とするウイルス性感染症です。
主に吸血によって人や動物に感染し、発熱や消化器症状、血小板減少などがみられます。SFTSは、2011年に新しいウイルス感染症として報告され、人において感染者と死亡者が続出しています。感染した犬猫から人への感染報告があります。

② 犬バベシア症

バベシア原虫が犬の赤血球に寄生して破壊します。貧血、発熱、食欲不振、黄疸などが見られ、急性の場合は死に至ることもあります。

どうやって予防するの?

1か月に1度、予防薬を使いましょう。ノミの予防にはノミ取り首輪、ノミ取りシャンプーなどの市販剤もありますが、動物病院処方の予防薬と比べると効果は低いです。動物病院処方の予防薬を選びましょう。
予防薬にはチュアブルや錠剤などの「飲み薬タイプ」、首の後ろに垂らす「スポットタイプ」があります。
飲み薬タイプは投与後、すぐにシャンプーが可能です。
フィラリア予防や内部寄生虫駆除も兼ねているものもありますので、動物病院でご相談ください。

飲み薬タイプ(チュアブルや錠剤)

スポットタイプ(滴下剤)

予防は暖かい時期だけでいい?

ミやマダニは気温が下がると活動性が低下します。
「じゃあ、予防しなくてもいいんじゃない…?」と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。
活動性が低いだけで、ノミやマダニは寄生するタイミングをうかがっています。
ノミは部屋の中の暖かい場所を見つけ出し、そこに潜んでいることもあります。一度侵入してしまうと繁殖が止まりません。
またマダニですが、秋の時期から大量に産卵して幼ダニが孵化してくる時期で、意外かもしれませんが秋はマダニのピークシーズンです。

もし家の中でノミが繁殖してしまったら…

先ほどご紹介したようにノミの繁殖能力は驚異的です。もし愛犬の皮膚にノミの成虫を見つけたとしても、目に見えている成虫は環境中のノミのたった5%!あとの95%は卵、幼虫、さなぎの状態で周囲に隠れています。定期的に駆除薬を投与し、ノミのライフサイクルを断つことが重要です。
また、環境の清浄化も大事でペットの寝床、絨毯、カーペットなどを中心に掃除を行い、潜んでいるノミを除去しましょう。

まとめ

今回ご紹介したように、ノミやマダニが愛犬に寄生すると、様々な弊害が起こりえます。
月に1回しっかり予防すれば、被害は最小限に抑えることが出来ます。
大切な愛犬が苦しまないよう、しっかりと予防しましょう。

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。