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もっと知りたい“猫”のこと|第5回

キャットフードのあれこれ「食」について その2

キャットフードについては様々な種類、考え方があり、選ぶ側の飼い主さんも混乱しているように見受けられます。
前回のコラムでは、キャットフードメーカーの分類、そして実際のフードごとの健康面への影響を測定するのは難しいと説明しました。つまりベストなフードというのは獣医師によっても意見が異なるということです。

「猫専門動物病院の獣医師の立場としては、どのようなフードがおススメなのか?」というご質問がありましたので、私の個人的な意見としておススメフードについて解説します。

猫に多い病気、少ない病気

猫には多い病気、少ない病気があります。
多い病気として、腎臓病、尿路結石、糖尿病、炎症性腸症、がん、甲状腺機能亢進症などです。
反対に犬や人に比べて少ないのは心臓病、皮膚病、整形外科疾患(骨折や靭帯損傷)です。
フードを選ぶ基準として猫に多い病気をケアしたものが良いと考えます。

おススメのフード

1. 水分が多いフード

猫に多い病気の中で腎臓病、尿路結石のリスク要因の1つが水分不足です。猫の喉の渇きを感じる感度が犬よりも鈍いことがわかっています。猫がなかなか水を飲みにいかないのはこれが理由の1つです。
水分含有量が高いウェットフードの方がドライフードより水分不足になりにくいので、ウェットフードをおススメします。ウェットフードは歯石が付きやすいという意見がありますが、実際にどのぐらい歯石のリスクが増えるかは明らかにされていません。

2. ハイプロテイン(高タンパク質)/ローカーボ(低炭水化物)

昨今では低炭水化物ダイエットが流行り、炭水化物が少ない食事、ローカーボという言葉も徐々に浸透しつつあります。
猫はもともとローカーボな食生活をしている動物でした。例えば自然の獲物であるネズミの成分で炭水化物の割合は9%しかありません。それに対して、一般的なドライフードは30~40%が炭水化物です。
猫はネズミなどの小動物を食べていたため、他の動物と比べると炭水化物の代謝が苦手です。具体的には、人は唾液中にも糖を分解するアミラーゼがありますが、猫にはそれがなかったり、また肝臓で糖の代謝を高める酵素、グルコキナーゼの活性が低いという特徴があります。
そのため現代の高炭水化物のフードが糖尿病が多い原因ではないか、と考える専門家もいます。

まとめ

おススメのフードの特徴として①水分が多い、②ハイプロテイン/ローカーボの2つをあげました。
実はスーパーマーケットに並んでいるフードでも、ほとんどのウェットフードがこの二つの特徴を備えています。さらにウェットフードは基本的に小分けで密封された容器なので保存料も入っていません。
そのため私のおススメとしては「愛猫の年齢のステージにあったウェットフード」となります。

またウェットフードは同じカロリーでもかさが多いので、猫の満腹感も高く肥満予防になります。
タンパク源としては牛肉、鳥、魚が多く、一部の研究者は、魚は猫のアレルギーになりやすいと指摘していますが、科学的な根拠は弱いです。日本の猫は伝統的に魚が好きなので、問題なければ魚ベースのウェットフードを選んでも良いでしょう。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/