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もっと知りたい“猫”のこと|第29回

猫の誤飲誤食

猫の腸は細く、1〜2cmのものでも詰まってしまう危険性があります。また猫は舌の構造から紐が絡まりやすく、遊んでいるだけでもスルスル飲み込んでしまう危険性が他の動物よりも高いです。特に飲み込みやすい注意すべきものや対処法について解説します。

猫の誤飲誤食が疑われる症状

誤飲誤食の1番の症状は嘔吐です。完全にものが詰まっている場合は4〜5回以上連続で吐き、最後は液体しか出なくなります。特に元気だった猫が急に連続して嘔吐している場合は誤飲誤食の疑いがあります。
ただし、異物が完全に閉塞していない状態(不完全閉塞)では嘔吐がなく、元気や食欲がなくなるだけのこともありますので、吐いてない=異物ではない、と考えるのは危険です。それ以外には中毒物質の場合は流涎(よだれがだらだら出ること)や、痙攣、呼吸がおかしい、などの症状が出ることもあります。

誤飲誤食しやすいもの

まず若い猫の方が圧倒的に誤飲誤食しやすく、2歳以下で特に注意しなくてはなりません。
誤飲誤食しやすいものとして一番多いのは、ネズミのおもちゃです。特にリアルな獣毛を使っているものは特に注意しましょう。ネズミ以外にも、紐で動かすタイプのおもちゃの先端は噛みちぎって飲み込むと危ないので注意しましょう。

実際に摘出されたおもちゃ右2つ。左は新品のもの

次に多いのは紐です。猫は舌がトゲトゲしているため、紐で遊んでいる間にトゲに絡まって飲み込んでしまうからです。特に紐は腸の中に絡まると、腸が引っ張られて引きちぎれてしまうため、おもちゃよりも危険性が高いとされています。

針付きの紐を飲み込んでしまった例。レントゲンでは胃(黄色の丸)に金属製の針が写っていた

人間の食べ物や薬も危険

人の食べ物ではチョコレートやタマネギなどが中毒を起こしやすいとされています。タマネギを大量に食べると赤血球が壊れて貧血になることがあります。
人の薬で飲んでいけないものの代表は「アセトアミノフェン」という解熱剤です。猫はこの薬の代謝が苦手で、少量でも命の危険があります。
ダイエットサプリメントの1つである「α-リポ酸」も猫に対しては非常に毒性が強く、急激に血糖値が下がり亡くなってしまいます。
人の食べ物は与えない、薬やサプリメントは必ず猫が届かない引き出しの中などに保管しましょう。

誤飲誤食してしまった時の対処

誤飲誤食をした場合はすぐに動物病院に連絡しましょう。夜間でもすぐに対処できるよう救急病院の連絡先も事前に調べておきましょう。
2時間以内であれば異物が胃に残っている可能性もあります。まだ胃の中にあれば、催吐処置を行って吐き出すことや、開腹せずに内視鏡で摘出できる可能性があります。自宅でできることはあまりなく、水を飲ませたりすると逆に異物が奥に進んでしまう可能性もあるので、必ず獣医師の判断を仰いでから行動しましょう。

誤飲誤食させないための対策

1番の対策は誤飲誤食する可能性のあるものを出しっぱなしにしないことです。上にあげたもの以外では、ヘアゴム、スポンジ、発泡スチロールなどが挙げられます。中毒になりうる薬、サプリメント関係のものは必ず引き出しの中にしまいましょう。

まとめ

猫は犬より数は少ないものの誤飲誤食で病院に運ばれてくることがあります。猫の舌の特徴から紐状のものを飲み込みやすいですが、普通のおもちゃが詰まることも多いので注意しましょう。
飲み込んだ瞬間を目撃できることの方が少なく、多くの場合は症状が出てから来院されます。「2歳以下」「昨日まで元気だった」「連続して吐いている」などの条件を満たしている場合はより強く異物を疑います。
誤飲誤食が少しでも疑われる場合は、早めに病院に連れて行きましょう。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/