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もっと知りたい“猫”のこと|第11回

肥満になってしまった室内飼育猫のダイエット

前回のコラムで糖尿病や心臓病など肥満猫がなりやすい8大疾患について解説しました。いずれの病気も猫の命に関わったり、生活の質を低下させますので、正常体型を維持してリスクを低下させることが大切です。
すでに肥満になってしまった猫は頑張ってダイエットをしましょう。猫は犬のように散歩をすることもないので、ダイエットの鍵は環境と食事になります。

環境

猫は遊んでいても15分ほどで飽きてしまいます。そもそも短距離で獲物を捕まえる習性である猫は、持久力がありませんし集中力も続きません。そのため猫の運動量が自然に増えるような工夫をしなくてはいけません。
1つはキャットタワーなど上下運動を増やす工夫です。最初は登れなくても体重が減ると登ってくれる猫もいます。

2つ目はご飯をあげるときに遊びながらあげる工夫です。前途のように猫は飽きやすい動物ですが、ご飯を食べるときは頑張ります。ドライフードを1粒ずつ投げて与えたり、中に少量のドライフードが入る市販のおもちゃを使うと良いでしょう。おもちゃを転がすと中身が少しずつ出るため、早食い防止にもなります。

食事

各メーカーから猫用ダイエット食が発売されていますが、それらのフードは低脂肪/高タンパク質、高食物繊維、L-カルニチン配合(脂肪の消費を促すと考えられる)などが特徴です。食物繊維は食後の急激な血糖値の上昇を抑え、腹持ちをよくします。

ダイエット食でも食べ過ぎていたらやはり痩せません。1日の摂取カロリーは以下の式によって求められます。

1日の摂取カロリー=理想体重×40kcal・・・・・・①

注意点としては現在の体重ではなく、理想体重をもとに計算する必要がある点です。理想体重はボディコンディションスコア(BCS)という指標をもとに計算します。BCSは体のシルエットや肋骨の触れる程度から猫の肥満度、痩せ度を5段階で評価する方法です。BCS4は体重過剰で理想体重の1.1倍以上、BCS5は肥満で理想体重の1.2倍以上と判断されます。

理想体重=現在の体重÷BCSの体重比率

例えば、体重6kg、BCS5(理想体重の1.2倍以上)の猫は以下の式で理想体重を求められます。

理想体重=6kg÷1.2=5kg

さらにこの肥満猫のダイエット時の1日摂取量は前述①の式を使うことで求められます。

ダイエット時の1日のカロリー量=5kg×40kcal=200kcal

ダイエットのペース

人間同様、急激なダイエットは健康に良くありません。猫の理想的なペースは週1〜2%の減少と考えられています。例えば8kgの猫であれば体重の1%は80g
なので、1週間後に7.92kgになっていれば良いという計算になります。
反対に1週間で2%以上、つまり160g以上減っている場合はダイエットのスピードが急過ぎます。少し1日の摂取量を増やしましょう。
週1〜2%の減少でBCS5の猫がBCS3(正常体型)まで戻るのは4〜6ヶ月程度かかるはずです。長期的なプランでダイエットを行いましょう。

最後に

BCSを正確につけるには経験が必要ですので、まずは動物病院で肥満度をチェックしてもらいましょう。猫は急激に痩せさせると、体調を崩しやすいので、ダイエットの途中でも獣医師にフォローアップしてもらうと良いでしょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/