知りたい

プロが語るお役立ち記事

もっと知りたい“猫”のこと|第10回

猫を室内で飼う上で注意すべき肥満症

愛猫のカツオ。もっとも太っていた時の写真。最大6kgまで増量してしまった

どちらが優れているという意味ではありませんが、猫は犬よりも完成された動物であると表現されることがあります。これは生物として猫は世界的に成功を収め、日本に限らずどこの国へ行ってもみかけることができるからです。
また猫は犬と比べて病気が少ない動物です。そのため動物医療保険の保険料が犬よりも低く設定されています。多様な目的のために様々な品種がいる犬に比べて、猫の体格は自然にかなり近いままであるため病気が少ないと考えらえれます。
これらのことから完成された動物と呼ばれることが多い猫ですが、それでも病気になることはあります。特に室内飼育では肥満になりやすく、それに関連した病気に注意しなくてはいけません。

肥満症

肥満は病気なの?と思われるかもしれませんが、れっきとした病気です。
人間ではBMI(体格指数)が25以上の状態を示しますが、猫では明確な定義はありません。一般的に理想体重の120%以上の状態の猫は肥満症といえるでしょう。
肥満症はそれ自体で命がおびやかされることはありませんが、様々な病気のリスクを上昇させます。

肥満猫でリスクが高まる8大疾患

  • 糖尿病:人と同じで肥満症になるとインスリンが効きにくい体質になり発症。毎日インスリン投与が必要になることが多い。
  • 皮膚病:肥満猫は効果的なグルーミングができなくなってしまうことから、様々な皮膚病に罹りやすい(アクネ=顎ニキビ、脱毛症、フケ、皮膚糸状菌症など)。
  • 便秘:運動不足により腸の動きが低下し便秘に。悪化すると手術が必要なことも。
  • 脂肪肝:トリグリセリドが肝臓に蓄積し発症。猫特有の病気で、命をおびやかす疾患の1つ。
  • 尿路疾患(膀胱結石など):肥満になるとトイレに行く回数が減り、蓄尿量が増えることで発症。
  • 口腔内疾患:口内炎や歯石が増える。なぜ肥満で増えるかはっきりとした原因は不明。
  • 関節炎:膝や肘に痛みが出る。ジャンプを嫌がるだけではなく、食欲不振の原因にも。
  • 心臓病:人と同様心臓の負荷が増大し、発症率が高まると考えられる。

猫は本来砂漠や森の中で小動物を捕食して生活していた動物です。そのため食物が潤沢に与えられ、さらに自ら動かなくとも簡単に手に入る環境であれば肥満になるのは当然のことかもしれません。
室内飼育の猫はチーターのようにくびれている必要はありませんが、歩いていてもお腹が地面に着きそうになるほどたるんでいるのは確実に肥満症です。

猫のダイエット

猫のダイエットはもしかすると人間よりも難しいかもしれません。愛猫に執拗にごはんを要求されると飼い主さんはついつい甘やかせてあげてしまいます。また犬のように散歩することもないため、運動量を増やすことが難しいです。小さい頃はアグレッシブに遊んでくれた猫も、中年の肥満猫になるとねこじゃらしに見向きもしません。
そのためダイエットの要は食事制限になります。家族で肥満症の危険性を共有し、一致団結して行いましょう。ついつい可愛いとっておやつをあげる人のような裏切り者が家族の中にいるといつまでたっても痩せません。
次回はより具体的なダイエットの話について解説しましょう。

特別企画
ブログで話題の猫専門獣医師

山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/