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「わが子の老後」を想像する|第4回

ペット共生型賃貸住宅で迎える老後:犬編(後編)

前回に続いてわんちゃんオーナー様に、「シニアペット共生型住宅」作りのための便利グッズをご紹介します!
お家で使う老犬の介護用品を選ぶときは、介護する「人間のリクエスト」よりも、介護される「愛犬のリクエスト」と、介護場所を提供してくれる「住まいのリクエスト」を優先してあげてくださいね。

【床】愛犬と住まいのため、これだけは対策したい
「防水フロアマット」

①自由度の高いジョイントマット

②継ぎ目には防水テープを

本来犬は柔らかい地面に爪を食い込ませながら歩く生き物。爪が「カチャカチャ」と音を立てるフローリングやタイルの床は、愛犬にとってスケートリンクのようなものです。滑らないように踏ん張り続ける足腰には、将来の寝たきりリスクとなる関節の負担が溜まり続けています。いつまでも自分の足で歩いてもらうために、ぜひ滑らず適度に柔らかい敷物の上で生活させてあげてください。

また、シニア犬の場合は食べこぼしやおもらしで床を汚す場面が増えてくるはずです。敷物はカーペットではなく、サッと拭ける防水フロアマットをお勧めします。

一般的なフロアマットはラグマットタイプですが、これは最初からサイズが決まっているのでわんちゃんの行動範囲を部分的にしかカバーできないのが難点です。

私のおすすめは拡張性や自由度に優れたジョイントマット(写真①)。わんちゃんの歩く場所に隙間なくレイアウトできるのが利点です。ただし水やオシッコが継ぎ目に浸透するとかえって床を傷めてしまいますので、写真②のように継ぎ目には防水テープを貼っておくと良いでしょう。

また、大判のマットを部屋の形に合わせてハサミで加工できるフリーカットマットもあります。これなら継ぎ目がないので掃除やお手入れもラクちんですね。

「つま先に力が入っていつまでも歩けそう。柔らかくて足腰も楽ちん!」
「最近はインテリアに合う防水マットもあるのね。掃除は少し手間が増えそう。」
「ヌレ、ヨゴレ、キズ、音、全部から大切な床を守ってくれる!」

【空気】老犬特有のニオイ対策
「空気清浄機」

ペットにベストマッチなイオン発生機

若い頃から気になる愛犬のニオイ。さらに年をとると次のような理由でニオイが強くなります。

  • 皮膚のトラブル
  • 歯周病などによる口臭
  • お散歩に行かなくなり室内で排泄
  • 身体の負担に配慮しシャンプー頻度が低下

ニオイはご近所トラブルの原因にもなるので、特に集合住宅では気をつけたいところですね。
この問題を想定した「へーベルメゾン+わん+にゃん」に標準装備されている空気清浄機がイオン発生機(写真)です。

空気清浄機の中でもイオン発生機は抗ウイルス、対生物臭、そして生物への安全性と、どれをとってもペットとの生活に最適なチョイス。動物病院でも広く使われるようになりました。

空気清浄機はイオン放出タイプの他にもたくさんの選択肢があります。病気に弱くなった老犬との生活にはニオイに特化した脱臭機よりも、空気清浄機がオススメですよ。

「年をとって免疫力が弱くなったボクを守ってもらえそう。」
「うちの子のニオイが気にならないし、生活臭と感染症対策にも!」
「ペットのニオイが少ないと近所迷惑も気にならないね。」

【音】自宅介護の天敵・夜鳴きの軽減に
「防音材・吸音材」

ネットなどで手に入るスポンジ系吸音材

老犬の自宅介護が続かなくなる理由の第一位は認知症による「夜鳴き」です。
鳴き声のボリュームは犬種にもよりますが、柴犬などの悲鳴のような夜鳴きは100デシベル(車のクラクション並み)に達し、それが一晩中続くことも。家族の睡眠時間も心配ですが、それ以上に不安なのが近隣の苦情によって退居を迫られる事ですね。

こんなとき防音ケージを購入する方もいますが、これは鳴き続ける要介護犬を閉じ込めることになるのでお勧めできません。
試す価値があるのは、介護場所をどこか一室に決め、最も遮音性の低い場所である窓ガラスにグラスウール・ウレタン・スポンジなどの防音・吸音材を密着させる方法です。

専門の業者に依頼すれば窓枠にピッタリはまる防音ボードをオーダー加工してもらえます。また防音材や吸音材はネットなどで手に入るのでDIYでも良いですが、その際ははがせる両面テープでガラス面に接着し、跡の残らないように設置しましょう。

遮音効果は10~20デシベル程度ですが、それだけでも近隣の聞こえ方はずいぶん変わります。犬の声に敏感な猫も暮らすのがペット共生住宅。愛犬の鳴き声は少しでも軽減して、望まない引越しや飼育破綻を回避したいものですね。

「断熱効果もあるから夏や冬が少しすごしやすくなったよ。」
「室内のうるささは変わらないし、使用中は換気と採光が犠牲に。」
「効果があればご近所トラブル防止に。内装を傷つけないように設置してね。」

まとめ

「人間相手の介護リフォームは、リクエストを言ってくれて設計しやすかったなあ」
老犬老猫ホームを自作したときの私は、しみじみとそう感じたものです。
希望を言葉で伝えてくれない老犬の快適な住まいづくりは、観察力と想像力をフル回転させる必要があったのです。
わが子の住まいへのリクエストも年齢と共に変わっていくもの。
飼い主さんにとってお気に入りの住まいが、わが子にとってもずっと住みよいものであるように、わが子の変化と心の声に注意しながら介護グッズを取り入れていきましょう。

特別企画

「わが子の老後」を想像する

渡部 帝氏プロフィール

老犬老猫ホーム東京ペットホーム 代表
一般社団法人老犬ホーム協会 副会長
元工務店経営者

平成26年、初の都市型老犬老猫ホームとなる「東京ペットホーム(https://tokyo-cathome.com/)」を開業。その後老犬老猫ホームの基準作りを目指す業界団体「老犬ホーム協会」の設立を主導し、平成30年の発足後から副会長を務める。
「飼い主の心に寄り添う」姿勢を信条として年間200件以上の飼育困難相談に無休対応。
特にペットの介護破綻問題に取り組む活動は国内外の多くのメディアが紹介している。