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わが子の将来を考える|第7回

犬のシニア期について:後編
気をつけたいシニア犬の病気

ここからは、シニア期・ハイシニア期に気をつけたい病気と、それに伴う生活の中の注意点を紹介していきます。

白内障

まず、前述した白内障。
初期であれば、点眼などによる治療で回復することもあります。
しかし、進行すると外科手術が必要となるうえ、手術をしても、力が回復しない例もあることから、早期発見早期治療が望まれる病気の1つでしょう。

加齢や白内障によって視力が低下すると、薄暗い所で物にぶつかるようになったり、段差などを怖がったり、躊躇する姿が見られるようになるかもしれません。
そのため、模様替えなどは極力控えるとともに、家具の角にぶつかっても怪我をしないよう、緩衝材などで角をカバーすることをお勧めします。

歯周病

次に気をつけたいのが歯周病ですが、進行すると、口の中に痛みが生じるため、ごはんを食べる量が減ることがあります。

口腔ケアを行うとともに、ドライフードをふやかしたり、ウェットフードに切り替えたり、食べやすいものを用意してみましょう。
ただし、柔らかいごはんは、歯と歯の隙間や歯茎の隙間に入り込みやすいため、食べ終わった後のケアを念入りに行う必要があります。
ハミガキはもちろんのこと、飲水によって口の中の汚れをある程度洗い流す効果が得られるため、ガブガブ水が飲める水飲み容器などを用意してあげましょう。

水温も、冷たい方が飲みやすい、ぬるめの方が飲みやすいなど個々の好みがあったり、季節に合わせて水温を調整する必要もあるかも知れませんので、よく観察してみてください。

関節炎

次に、老齢疾患の代表ともいえる関節炎。
研究によると、10歳以上の犬の約半数が関節になんらかの問題を抱えており、さらにその飼い主の約半数がその問題に気がついていなかった、という結果が出ています。

散歩のときに足を引きずるように歩いている、段差を避けるようになった、歩くのが遅くなった、足に触られることを嫌がる、といった行動が見られる場合には、関節に問題を抱えているかもしれませんので、動物病院での診察を受けましょう。
同時に、室内の環境を見直してあげる時期でもあります。
滑りやすい床、フローリングなどには、滑り止めのマットや絨毯などを敷いてあげるとよいでしょう。
段差を登る必要がある場合には、スロープを設置するといった工夫も必要です。

認知症

そして、認知症。
日本では、柴犬や柴MIXなどでよく見られるといわれていますが、どの犬種でも発症する可能性のある病気です。

今のところ完治する病気ではないものの、病気の進行を遅らせたり症状の改善が認められることもあるため、早期発見早期治療が望ましい病気の1つです。

認知症が疑われる症状として、以前に比べると遊ばなくなった・寝てばかりいる・昼夜逆転の行動(夜中に鳴く、動き回る)・攻撃的になる・反応が鈍くなる・トイレの失敗が増える、といったことが挙げられます。
認知症が起こるメカニズムはまだわかっていない部分が多いものの、刺激不足が認知症を引き起こす1つの原因ではないか、とも考えられています。

関節炎などによって、散歩に行く機会が減り寝る時間が増えると筋肉が減るため、さらに運動がしにくくなります。
そうなると、ますます散歩に行く機会が減り、散歩に行くことでもたらされていた心身への刺激がどんどん減ってしまうことになります。
歩ける範囲で散歩に連れ出したり、歩くことが困難であれば、ペットカートなどを利用する、運動する機会として、高齢になっても機能しているといわれる嗅覚を利用したノーズワーク(鼻を使ってごはんやおやつを探す遊び)を日々取り入れたりするなどして、刺激を与えるようにしてあげましょう。

まとめ

健康に、そして元気にシニア期、ハイシニア期を過ごしてもらうためには、老齢になった犬との向き合い方や、日々の暮らしの工夫が必要となります。
「犬は私たち人間より先に老いるいきもの」であることを受け入れ、シニア期以降に現れてくる変化に向き合っていきましょう。

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佐藤 麻衣氏プロフィール

一般社団法人 全日本動物専門教育協会
動物介在福祉士 教師
家庭犬訓練士 教師
SAE認定 犬猫行動アナリスト 専任講師
SAE認定 愛玩動物介護士 専任講師
SAE認定 愛玩動物介護士アドバンス 専任講師
SAE認定 犬の健康生活管理士 専任講師

長年動物の専門学校で教鞭をとり、犬のトレーニングや動物介在福祉活動などに従事。
現在は専門学校や大学、国内初の官民協働PFI刑務所の職業訓練プログラムに於いてトレーニング技術を教え、一般の飼い主に向けても資格取得に向けた講座やペット防災など様々なセミナーで活躍。