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わんわん診察室|第1回

犬の外耳炎

外耳炎は最も多い動物病院への来院理由の1つです。
アニコム損保のデータによるとなんと約7頭に1頭のわんちゃんが外耳炎を経験していることがわかっています!また他の病気に比べ、再発率が高いのが特徴です。
お耳で悩んでいる飼い主さんやわんちゃんが実はとても多いのですが、「外耳炎」とは一体どんな病気なんでしょう??

どんな病気?

耳介から鼓膜の手前までの通り道(外耳道)に炎症が起きる病気です。耳のかゆみが主に見られ、耳が赤くなったり耳アカが増えたりします。
温度や湿度が上がり始める4月あたりから発症が増え、夏の間に悪化がみられることが多いです。放っておくと炎症が中耳や内耳にまで進行することがあり、そうなると神経症状が出たり、手術が必要になったりする場合があるので、早期発見と治療が大事になってきます。

耳が赤くなり、ベタベタした耳アカが出ている

炎症により耳が分厚くガサガサに。色素沈着も見られる

なにが原因?

外耳炎になりうる原因はたくさんあります。複数の原因が関与していることもあり、外耳炎の病態が複雑化する原因になっています。

耳アカ検査により確認された耳ダニ

  • 感染症(細菌・カビ・耳ダニなど)
  • アレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー)
  • 異物(腫瘍やポリープ、植物の種、小石など)
  • ホルモン異常(甲状腺機能低下症、性ホルモン失調)など

外耳炎にかかりやすい犬種

犬種特有の耳の形や特性などにより外耳炎になりやすい犬種があります。

トイ・プードルの耳:耳毛が多く生えており耳アカと絡み合っている

  • 耳道が狭い:フレンチブルドッグ、パグ
  • 耳毛が多い:トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー
  • 分泌腺の異常:アメリカン・コッカースパニエル
  • 犬アトピー性皮膚炎の好発犬種:柴犬、シーズー、フレンチブルドッグ、レトリーバー種

こんなしぐさが見られたら気をつけて!

外耳炎になると、耳を掻いたりする動作がよく見られる

外耳炎になると、
耳の中が赤い・耳がくさい・頭を振る・耳をかく・耳アカがたくさん出る
などの症状が見られます。

また、重度になると痛みから頭を触られることを嫌がる、元気がなくなる、首を傾ける、まっすぐに歩けないなどの症状が出ることもあります。早いうちに病院を受診しましょう。

治療

洗浄液で耳アカを取り除く耳洗浄を行い、点耳薬や飲み薬で治療します。耳ダニがいる場合は駆除剤を用います。
何度も再発する外耳炎は、アレルギー体質やホルモン異常が関与していることが多く、その場合はそちらの管理を行わなければ良くならないことが多いです。獣医師に相談しましょう。また、異物が原因の場合や中耳・内耳まで炎症が及んでいる場合は麻酔をかけて処置しなければならない場合もあります。

耳洗浄液、耳アカ溶解剤、点耳薬など

耳の内視鏡(耳オトスコープ)で覗いた耳の中:奥に耳アカがたまっている

繰り返さないために

日々のスキンシップの一環として、耳の状態をチェックするのを習慣にしましょう。正常な耳の様子を知っておくことはとても大事です。いつもと違う感じ(赤み、匂い、分泌物)がしたら早めの受診が大事です。
また、外耳炎になりやすいわんちゃんは定期的に病院で耳のチェックをしてもらいましょう。

自宅でのケア

耳アカが軽く付着している程度なら、湿らせたコットンなどで軽く拭き取ってお掃除しましょう。ゴシゴシこするのは厳禁です。
綿棒でのお掃除は耳アカを耳の中に押し込んでしまったり、耳道を傷つけてしまったりすることもあるので、あまり使用はおすすめしません。

まとめ

耳の中は、肉眼では症状を確認するのが難しい部位です。問題のなさそうな耳でも実は奥でトラブルが起きていることもあります。適切なケアや検診で愛犬の耳を守ってあげましょう!

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石村先生わんわん診察室

石村拓也先生プロフィール

シリウス犬猫病院(川崎市中原区)院長。東京農工大学卒業後、横浜市の動物病院にて勤務。2017年3月、東急東横線元住吉駅そばにて現院開業。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。